「109」は縦中横]

たのしくすごせ、ただひとときの命を。
一片《ひとかけ》の土塊《つちくれ》もケイコバードやジャムだよ。
世の現象も、人の命も、けっきょく
つかのまの夢よ、錯覚よ、幻よ!

  110[#「110」は縦中横]

大空に月と日が姿を現わしてこのかた
紅《くれない》の美酒《うまざけ》にまさるものはなかった。
腑に落ちないのは酒を売る人々のこと、
このよきものを売って何に替えようとか?

  111[#「111」は縦中横]

月の光に夜は衣の裾《すそ》をからげた。
酒をのむにまさるたのしい瞬間《とき》があろうか?
たのしもう! 何をくよくよ? いつの日か月の光は
墓場の石を一つずつ照らすだろうさ。

  112[#「112」は縦中横]

あすの日が誰にいったい保証出来よう?
哀れな胸を今この時こそたのしくしよう。
月の君*よ、さあ、月の下で酒をのもう、
われらは行くし、月はかぎりなくめぐって来よう!

  113[#「113」は縦中横]

あわれ、人の世の旅隊《キャラヴァン》は過ぎて行くよ。
この一瞬《ひととき》をわがものとしてたのしもうよ。
あしたのことなんか何を心配す
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