名人上手に聴く
野呂栄太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)定石《じょうせき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)革命的[#「革命的」に「×」の傍記]理論

×:伏せ字
(例)革命的[#「革命的」に「×」の傍記]理論
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 もう三、四カ月も前であったと思うが、偶然の機会に、木村八段の将棋講座のラジオ放送を聞いた。飛車落ち定石《じょうせき》の説明のようであったが、私の聞いたのはその終わりの五、六分間である。木村八段はそこで、「上手《じょうず》に対して飛車落ち程度でさせるようになると、そろそろ定石を無視して自己流の差し方をするものであるが、それは厳重に慎まねばならぬ。よく人は、こちらがいくら定石通りに差そうと思っても、相手方がそれに応ずるように差してこないから、定石など実践においては役に立たない、というが、これは大きな心得違いだ。飛車落ちの対局だからといって、飛車落ちの定石がそのまま適用されるものではない。お互いに定石を紋切り型に繰り返すだけなら何の変哲もないものになってしまうだろう。上達して名人上手と言われるようになればなる
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