お米をいれてもつてつた
鼠の嫁さん
ちよろちよろ歩き
お耳にかんざし
ちよこらとさしてゐた
お耳のかんざし
お眼《めめ》はポチポチ
鼠の嫁さん
お髯が生えてゐた
鼠の嫁入り
お供の皆さん
お米のはいつた
紙の袋を
ひつぱりひつぱりもつてつた
[#1字下げ]かもめ[#「かもめ」は大見出し]
かもめ飛んだ 飛んだ
かもめ が 飛んだ
一羽 おくれて
あとから 飛んだ
海は遠いし
渚は長し。
かもめ飛んだ 飛んだ
あとから 飛んだ
一羽 はぐれて
いそいで 飛んだ
海は遠いし
渚は長し。
[#1字下げ]かくれんぼ[#「かくれんぼ」は大見出し]
見えた 見えた 見えた
足《あんよ》が見えた
お顔かくして
かくれんぼしてる
見えた 見えた 見えた
お手《てて》が見えた
お眼《めめ》かくして
かくれんぼしてる
見えた 見えた 見えた
お顔が見えた
お眼つぶつて
かくれんぼしてる。
[#1字下げ]尾上の松[#「尾上の松」は大見出し]
尾上《をのへ》の松に
鶴が来てとまりや
鶴が来てとまりや
松葉がパアラパラ
松葉の数は
一本一本かぞへりや
千年かかる
千年目にも
鶴が来てとまりや
鶴が来てとまりや
松葉がパアラパラ
松葉の数は
一本一本かぞへりや
万年かかる。
[#1字下げ]機織り[#「機織り」は大見出し]
おいで おいで おいで
お客においで
わたしや このごろ
機《はた》を織りました
一つ日の出の
鶴を織りました
二つ芙蓉の
花を織りました
三つ三笠の
月を織りました
鶴は日の出に
向いて啼きました
花はりんりん
りんと咲きました
月は遙に
冴えて照りました
おいで おいで おいで
お客に おいで
わたしや 美事に
機を織りました
[#1字下げ]鼠の小母さん[#「鼠の小母さん」は大見出し]
いまここ鼠が
ちよつと通つた
鼠の小母《をば》さん
蝙蝠《かうもり》さん
いまここ鼠が
ちよつと通つた
鼠の小母さん
蝙蝠さん
御門《ごもん》の扉を
見やしやんせ
お月さんがちよつと出て
ちよつと射した
月夜になつたら
蝙蝠さん
鼠もちよつと呼んで
ちよつと遊ぼ
[#1字下げ]七つ星[#「七つ星」は大見出し]
七つならんだ
七つ星
七つならんで
夜《よ》が更ける
夜ふけにやお星も
みなねむる
眠れば静《しずか》に
夜が更ける
眠れよ七つの
七つ星
夜更けにやお星も
みなねむる
[#1字下げ]海坊主小坊主[#「海坊主小坊主」は大見出し]
カンカラカンカラカン
海坊主 出たぞ
小坊主の先きに
海坊主 出たぞ
カンカラカンカラカン
海坊主 小坊主
小坊主も 出たぞ
カンカラカンカラカン
[#1字下げ]芒の穂[#「芒の穂」は大見出し]
山の芒《すすき》の穂
山から風吹きや ホウイ
里の方へ ホウイ
山から里見て
わが山 忘れた ホウイ
里の芒の穂
里から山見た ホウイ
山の方へ ホウイ
山から手招ぎや
わが里 忘れた ホウイ
[#1字下げ]影踏み[#「影踏み」は大見出し]
お出し お月さん
影法師 お出し
出そか 影法師
踏まそか とんと
お出し 影法師
影法師 お出し
出した 影法師
踏んだか とんと
お出し お月さん
影法師 お出し
お出し 影法師
踏むから お出し
[#1字下げ]眠り亀の子[#「眠り亀の子」は大見出し]
眠れ眠れ
首出した
亀の子
亀の子が
眠つた
眠れ眠れ
足出した
亀の子
亀の子が
眠つた
眠れ眠れ
眠つたか
亀の子
亀の子が
眠つた
[#1字下げ]雀の機織り[#「雀の機織り」は大見出し]
雀の機《はた》織り
雀の機織り
雀が機織る
雀の機織り
よく織る よく織る
チン チン パタ パタ
チン チン パタ パタ
お藪で機織る
雀の機織り
今日きり日がない
お嫁のお支度
忙がし 忙がし
チン チン パタ パタ
チン チン パタ パタ
[#1字下げ]宮城野の萩[#「宮城野の萩」は大見出し]
宮城野の萩は
薄《すすき》の蔭に
ちよつぴり咲いた
お馬が通ると
薄の蔭で
お馬を見てる
急げよお馬
薄の蔭を
ちよつぴり急げ
宮城野の萩は
薄の蔭で
お馬を見てる
[#1字下げ]秋の月[#「秋の月」は大見出し]
石山寺の秋の月
瀬田の唐橋《からはし》誰《た》が渡る
たれも渡らぬわしや渡る
橋の上から下見れば
水にうつるはわが姿
月は姿にみとれてる
帰る矢橋《やばせ》の船でさへ
風が吹かなきや
帰られぬ
帰らにやわが児に逢はれない
月は帰りを
急いでる。
[#1字下げ]こほろぎ遊び[#「こほろぎ遊び」は大見出し]
こほろぎ コロコロ
夜長だな
夜長だ 夜長だ
帯くけた
その帯 どの子に
締させる
この子に この帯
締させる。
[#1字下げ]かくれんぼ[#「かくれんぼ」は大見出し]
下駄に火がつく
かくれんぼ出て来《こ》
出て来 かくれんぼ
鼻緒が燃える
下駄に火がつく
鬼さん留守だ
出て来 かくれんぼ
かくれんぼ出て来
[#1字下げ]雲雀の水汲み[#「雲雀の水汲み」は大見出し]
雲雀《ひばり》の水汲み
お日さま高いぞ
さつさと
水汲め
水なし畑に
畑がなるまで
さつさと
水汲め
お日さま高いぞ
お日さま高いぞ
さつさと
水汲め
水なし畑に
畑がなるまで
さつさと
水汲め
[#1字下げ]鶯の夢[#「鶯の夢」は大見出し]
梅の小枝で 梅の小枝で
鶯は
雪の降る夜の
夢をみた
野にも山にも
雪ばかり
サラ サーラと
雪ばかり
雪の降る夜に 雪の降る夜に
鶯は
梅の花咲く
夢をみた
野にも山にも
梅ばかり
チラ チーラと
梅ばかり
[#1字下げ]藪の下道[#「藪の下道」は大見出し]
ここを通れば雀のお宿
ここのこの道近道ぢや
さアさ急いで通りなさい
雀のお宿にや雀はお留守
ここのこの道近道ぢや
さアさ急いで通りなさい
早く通らにや雀が帰る
ここのこの道近道ぢや
さアさ急いで通りなさい
[#1字下げ]チツクリ虫[#「チツクリ虫」は大見出し]
とんぼ来い来い
釣瓶《つるべ》にとまれ
井戸の釣瓶は
日が永い
草にとまるな
チツクリ虫ゐるぞ
今朝も泣く子の
足刺した
[#1字下げ]子鳩の歌[#「子鳩の歌」は大見出し]
山は晴れたぞ
野に寝た 子鳩
帰れ 子鳩よ
もどれよ 山へ
はぐれ子鳩に
なるから 帰れ
野には 野狐
畑にや鼬《いたち》
鼬ア啼いたぞ
戻れよ 子鳩
狐ア来るから
帰れよ 子鳩
[#1字下げ]赤とんぼ[#「赤とんぼ」は大見出し]
つんつん 飛んでる
赤とんぼ
金魚屋の 金魚は
何してた
みんなで並んで
水呑んでた
つんつん 飛んでる
赤とんぼ
鳥屋《とつとや》の 鶏《とつと》は
何してた
みんなで並んで
ねんねしてた
[#1字下げ]お母さんと一緒[#「お母さんと一緒」は大見出し]
おもちやの手桶を
買つて来た
おもちやの手桶で
なに汲んだ
お母《つか》さんと一緒に
水汲んだ
おもちやの箒で
なに掃いた
お母さんと一緒に
庭掃いた
銀の鈴
兎 兎
銀の鈴
やろか
お耳に 銀の鈴
さげて
やろか
兎 兎
うれしがつて
はねた
銀の鈴 ほしくて
ぴよこんと
はねた
[#1字下げ]お客にゆく日[#「お客にゆく日」は大見出し]
お下髪《さげ》に
お結ひよ
可愛から
黒い油
おつけよ
可愛から
赤い櫛
おさしよ
可愛から
可愛から
お客に
連れてゆこ
[#1字下げ]柿の木[#「柿の木」は大見出し]
種から生えた
柿の木は
百年たつても
柿の木だ
種から生えた
柿の木は
千年たつても
柿の木だ
山から 烏が
飛んで来て
「赤い柿 甘《うま》い」と
食べちやつた
烏が 食べても
柿の木は
いつまで たつても
柿の木だ
[#1字下げ]山ほととぎす[#「山ほととぎす」は大見出し]
山ほととぎすは
八千八《はつせんや》声《こゑ》
一声目には
四千四声
二声目にも
四千四声
山ほととぎすは
八千八声
一声目には
まだ夜は明けぬ
二声目には
東が白む
山ほととぎすは
八千八声
[#1字下げ]兎のダンス[#「兎のダンス」は大見出し]
ソソラ ソラ ソラ兎のダンス
タラッタ ラッタ ラッタ
ラッタ ラッタ ラッタ ラ
脚で蹴り蹴り
ピヨツコ ピヨツコ 踊る
耳に鉢巻 ラッタ ラッタ ラッタ ラ
ソソラ ソラ ソラ可愛いダンス
タラッタ ラッタ ラッタ
ラッタ ラッタ ラッタ ラ
とんで跳ね跳ね
ピヨツコ ピヨツコ 踊る
脚に赤靴 ラッタ ラッタ ラッタ ラ
[#1字下げ]虫の音楽[#「虫の音楽」は大見出し]
虫の音楽 面白い
面白い
鈴虫アりんりん
鈴振つた
松虫 ガチヤガチヤ
きりぎりす
虫の音楽 賑《にぎやか》だ
賑だ
りんりんガチヤガチヤ
チンチロリン
きりきりガチヤガチヤ
チンチロリン
[#1字下げ]螢の飛行機[#「螢の飛行機」は大見出し]
螢の飛行機
山からホイ
早く山から
急いで来い
飛行機ホイ
山からホイ
ほウほウ螢の
飛行機ホイ
早く山から
急いで来い
飛行機ホイ
山からホイ
[#1字下げ]四つの星[#「四つの星」は大見出し]
流れ星ア
流れて
落ちて来る
離れ星ア
はなれて
光つてた
かくれ星ア
かくれて
まだ出ない
渡り星ア
渡つて
海に落ちた
[#1字下げ]案山子[#「案山子」は大見出し]
夕やけ
小やけ
田甫《たんぼ》の
案山子《かかし》
明日《あした》は
天気
蓑笠
いらぬ
蓑ぬいで
ほせよ
笠とつて
ほせよ
[#1字下げ]野の虫[#「野の虫」は大見出し]
夜になると
野の虫は
なんにも
かんがへない
電燈をたづねて
とんでくる
電燈をたづねて
とんでくる
野の虫さへも
暗いのはきらひ
[#1字下げ]お留守[#「お留守」は大見出し]
ここのお家《うち》は
お留守かい
ドンドン
ドン
御門《ごもん》がしまつて
をりますね
ドンドン
ドン
お留守でお留守居
ゐませんか
[#1字下げ]夜明け烏[#「夜明け烏」は大見出し]
カホカホ啼くのは
明け烏
もう夜《よ》が明ける
夜が明ける
夜明けの海には星一つ
お山の上にも星一つ
夜明けのお星は
もう見えぬ
もう夜が明ける
夜が明ける
夜明けにや夜明けの明け烏
カホオホ啼くから夜があける
[#1字下げ]一ツ目小僧[#「一ツ目小僧」は大見出し]
お空で光るは
あれは 何
あれは 闇夜の
お星さま
お背戸で光るは
あれは 何
一ツ目 小僧の
お眼《めめ》だよ
一ツ目 小僧の
目は 幾つ
一つ目 小僧は
一つだよ
二つ光るは
あれは 何
あれは お供の
お眼だよ
[#1字下げ]松虫[#「松虫」は大見出し]
チロリン チロリン チンチロリン
チロリン チロリン チンチロリン
松虫は
お藪にとまつて鳴きました
お藪の蔭は
茨と薄《すすき》
茨にや刺《ささ》れ
足《あんよ》が痛い
薄にや切られ
お手《てて》が痛い
チロリン チロリン チンチロリン
チロリン チロリン チンチロリン
松虫は
お藪にとまつて鳴きました
[#1字下げ]木の葉[#「木の葉」は大見出し]
雀になれよ
雀になれよ
木の葉がとんで
雀になれよ
雀になつて
お屋根で遊べ
雀の鳥は
お屋根で遊ぶ
雀に
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