別後
野口雨情
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)嘶《いなな》く
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)去年|常陸《ひたち》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)別後[#「別後」は大見出し]
−−
別後[#「別後」は大見出し]
[#1字下げ]別後[#「別後」は中見出し]
逢ひは しませぬ
見もしま せぬに
わしの この村を
馬に乗つて 通つた
馬も嘶《いなな》く
わたしも泣いた
逢はれないのに
逢ふ気で来てる。
[#1字下げ]焼山小唄[#「焼山小唄」は中見出し]
五条館《ごでうやかた》の
女郎《いらつめ》は
山に雉子啼く
日であつた
被衣《かつぎ》かづいて
片岡の
馬に乗られて
まへられた
馬が嘶《いなな》きや
女郎は
かつぐ被衣に
顔かくれ
雉子が啼いてる
いただきの
山の麓を
越えられた
越えたその夜《よ》に
いただきの
山は焼けたが
野は焼けず
芒尾花《すすきをばな》は
片岡の
馬に喰はれて
芽が萠
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