だまされた
野中の一軒家の
きりぎりす
青い芒《すすき》に
降る雨は
ちんちりりん ちんちりりん
降りました。
[#1字下げ]武蔵野[#「武蔵野」は中見出し]
武蔵野に咲く
一輪の
花はやつれて咲きました
「君は 君は」と
武蔵野の
草の中から咲きました
わたしの胸に
恋の日の
花は再び咲くでせうか
草の中から
武蔵野の
花はやつれて咲きました。
[#1字下げ]かなかな蝉[#「かなかな蝉」は中見出し]
初恋《はつごひ》でせう 背戸山で
かなかな蝉が
鳴いてます
別れて遠き君ゆゑに
「別れました」と
言ひました
初恋でせう 背戸山で
かなかな蝉が
鳴いてます。
[#1字下げ]おかよ[#「おかよ」は中見出し]
去年 七月
木小屋の 背戸だ
月もお暈《かさ》を
召してた晩だ
草の露さへ
きらきらしてる
泣いて別れた
忘りヨか おかよ。
[#1字下げ]白露虫[#「白露虫」は中見出し]
かげろふの
あしたはまたぬ命だと
たよりは来たが
どうしよう
ひとつにはまたひとつには
かすかに白き
花でせう
しよんぼりとまたひとつには
さびしく咲いた
花でせう
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