1字下げ]螢草[#「螢草」は中見出し]

垣根の外に
来ては泣く
故郷《ふるさと》の
恋しい唄に聞きほれて
垣根の外に
来ては泣く

下野《しもつけ》の 機場《はたば》に
しぼむ螢草《ほたるぐさ》
垣根の外に
故郷の
恋しい唄を
聞いて泣く。


[#1字下げ]霜枯れ[#「霜枯れ」は中見出し]

裏の田甫《たんぼ》で
鴫《しぎ》がゆふべ啼いた

ささげ畑の 嵐の晩も
君は忍んで 逢ひに来て
呉れた

裏の田甫で
鴫がゆふべ啼いた

鴫も田甫も霜枯れだけど
君は今夜《こよひ》も 逢ひに来て
呉れよう。


[#1字下げ]お糸[#「お糸」は中見出し]

雑木林の
啄木鳥《たくぼくてう》は
杉の枯れ木を
啄《つつ》いて啼いた

杉の枯れ木を
啄木鳥は
無性《むしよう》 やたらに
啄いて啼いた

掛けた襷の
解けたも知らず
涙うかべて
お糸は見てた。


[#1字下げ]麦の穂[#「麦の穂」は中見出し]

ちら ほら 麦の穂
出る頃は
こんこん狐の
目が光る

十六 酒屋の
姉 娘
こんこん狐に
ついてつた

酒屋のうしろの
篠籔に
狐がまた来て
覗いてる。


[#1字下げ]女工唄[#「女工唄
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