の家に住むだらう
自分の家を失《なくし》て了つた己は
他人の家でも住み馴れた家は恋しい
一生涯借家住ひで暮らさねばならない己は
旅烏のやうだ
去年の夏は東京に居て今年の今は葛飾に居る
他人の知らない涙が
己の胸にはいつも一杯に溜つてゐる
これが自分のものと定《きま》つた家があつたなら
己はどんなに嬉しいだらう
また住み馴れたこの家をたつて
知らぬ他国に行かねばならぬ
己に悲しい夏が来た
底本:「定本 野口雨情 第一巻」未来社
1985(昭和60)年11月20日第1版第1刷発行
底本の親本:「都会と田園」銀座書房
1919(大正8)年6月10日刊
入力:川山隆
校正:noriko saito
2010年5月18日作成
青空文庫作成ファイル:
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