の出来ない
子蛙に

泳ぎを教へて
ゐるのです

バッチヤ バッチヤ
ザンブ ザンブ
シユシユ シユ


[#1字下げ]燕の泥ぬり[#「燕の泥ぬり」は中見出し]

燕のお家《うち》は
泥の家

田甫《たんぼ》の泥土
はこんだり

お堀の泥土
はこんだり

お口で壁ぬり
いたします

忙がし 忙がし
ピイチク チー

お口も よごれて
泥だらけ

お花が咲いても
いきません

せつせと お家を
つくります


[#1字下げ]目高[#「目高」は中見出し]

大きい 目高は
隊長さん

ツンツク ツクツク
ツンツンツン

小さい 目高は
兵隊さん

負けずに ツクツク
ツンツンツン

どんなに この川
深かろが

どんなに 流れが
早かろが

目高だ 目高だ
行列だ

ツンツン ツクツク
ツンツンツン


[#1字下げ]螢[#「螢」は中見出し]

ほたるは たんぼで
ひかります

ほたるの ひかりは
ぴつかりこ

ぴつかり ぴつかり
ぴつかりこ

ほたるは とんで
すういすうい にげる

たんぼの たのなか
すういすうい


[#1字下げ]沼の鮒釣り[#「沼の鮒釣り」は中見出し]

銀鮒 金鮒
沼の鮒
沼の鮒釣り
面白い

釣竿かついで
友達と
田甫《たんぼ》の釣道
エッサッサ

大鮒 小鮒が
寄つて来る
沼の縁でも
よく釣れる

今日もにこにこ
元気よく
沼の鮒釣り
エッサッサ


[#1字下げ]螢狩り[#「螢狩り」は中見出し]

螢 来い 来い
ここへ 来い

田甫《たんぼ》は 泥田で
いかれない

泥田の田甫は
飛んで 来い

螢 来い 来い
ここへ 来い

川が 深くて
いかれない

川が深くば
飛んで 来い


[#1字下げ]どんと波[#「どんと波」は中見出し]

どんと波来い
沖から来い

遠くの沖から
つづいて来い

大波 小波で
仲よく来い

来い来い来い
どんと波来い

どんと波どん
どんどんどん

道草しないで
急いで来い

仲よく陸《をか》見て
どんどと来い

来い来い来い
どんと波来い


[#1字下げ]オハナ バタケ[#「オハナ バタケ」は中見出し]

タカイ トホクノ
オヤマニハ

オハナ バタケガ
アルノ デス

オハナ バタケニ
サクハナハ

ナツヲ マツテテ
サキマシタ

アカヤ キイロヤ
モモイロヤ

シロヤ シボリヤ
ムラサキヤ

ミンナ ミゴトナ
ハナ デシタ


[#1字下げ]お風呂[#「お風呂」は中見出し]

お風呂が 沸いた
もう沸いた

おもちやの 金魚が
浮いてゐる

一匹 二匹
三 四 匹

金魚と一緒に
はいりませう

おもちやの 金魚は
面白い

沈めてやつても
浮きあがり

泳げといつても
泳がない

お風呂に 並んで
遊んでる


[#1字下げ]お星さん[#「お星さん」は中見出し]

空で ピカピカ
お星さん
あれあれ お目々が
光ります

空の 上から
遠くまで
毎晩 寝ないで
見てゐます

小さい お星は
ねむいから
お目々が ぽちぽち
するのです

それでも やつぱり
ねむらずに
お目々を こすつて
起きてます


[#1字下げ]お池つくり[#「お池つくり」は中見出し]

夏はお庭で
父さんと

お池こさえて
遊びませう

お庭掘つたら
真つ先きに

裏の井戸から
父さんと

水をバケツで
運びませう

ざんぶざんぶと
涼しそに

水がお池に
たまつたら

金魚いかして
眺めませう


[#1字下げ]海[#「海」は中見出し]

海は 青くて
きれいです

海を 眺めて
をりますと

夏でも 凉しく
なるのです

海は 広くて
愉快です

波と 波とが
どんどん と

負《まけ》ずに 駈けくら
いたします


[#1字下げ]ささぶね[#「ささぶね」は中見出し]

ささの はつぱの
ささぶねは

川を ながれて
いきました

川は うみまで
つづきます

なみも うみには
うつてます

ろもない ほもない
ささぶねは

どこまで ながれて
いくのでせう


[#1字下げ]すつぽん亀の子[#「すつぽん亀の子」は中見出し]

[#ここから4字下げ]
註 *満洲国の河。外蒙古と内蒙古の国境が北へ向かつて興安嶺につき当つた辺から東へ流れ出してゐます。下流は有名な松花江であります。
[#ここで字下げ終わり]

※[#「さんずい+兆」、第3水準1−86−67]児河《ドルガ》*の亀の子
スツポン ポン

すつぽん亀の子
ピツチヤ ピチヤ

ピチヤ ピチヤ 首出せ
スツポン ポン

すつぽん亀の子
泥だらけ

泥から 匍ひ出す
スツポン ポン

※[#「さんずい+兆」、第3水準1−86−67]児河の泥水
ピツチヤ ピチヤ


[#1字下げ]夕立[#「夕立」は中見出し]

夕立 駈あし 早いあし
出て来た 出て来た 入道雲

忽《たちま》ち お空に ひろがつて
見る間に 降り出す 強い雨

鳴り出す 鳴り出す 光り出す
ピカピカ ゴロゴロ 稲光り

忽ち お空を 駈けぬけて
早いぞ 早いぞ 入道雲


[#1字下げ]螢と露[#「螢と露」は中見出し]

空のお星が
落ちて来て

蛍の 光に
なつたとサ

蛍の 光は
すいすいと

夜露を たづねて
飛んでます

夜露も 空の
お星から

草の葉 木の葉に
降るのです

螢も お星を
忘れずに

夜露を たづねて
飛んでます


[#1字下げ]七夕[#「七夕」は中見出し]

毎年《マイネン》 七月
七日ニハ

タンタン七夕
星祭リ

タンタン七夕
来タナラバ

タンタン短冊
歌カイテ

短冊 ツルシタ
竹タテテ

タンタン 七夕
祭リマセウ


[#1字下げ]カミシバヰ[#「カミシバヰ」は中見出し]

ハジマル ハジマル
カミシバヰ

アワテタ ネズミノ
オシバヰ ダ

チヤンキ チヤンキ
チヤン チヤン

コネコニ オハレタ
オヤネズミ

タマゲテ アワテタ
オシバヰ ダ

チヤンキ チヤンキ
チヤン チヤン


[#1字下げ]松虫[#「松虫」は中見出し]

チロリン チロリン
チンチロ リン

チロチロ チロリン
松虫や

ハイ ハイ 御用は
なんですか

野原に ゐたとき
どうしてた

チロリン チロリン
なきながら

朝露 夜露を
吸ひました


[#1字下げ]セイタカコスモス[#「セイタカコスモス」は中見出し]

セイタカ
コスモス
セイクラベ

オテテヲ
アゲテモ
トドカナイ

タカイナ
タカイナ
カテナイナ

ワタシノ
セイデハ
カナハナイ


[#1字下げ]月と兎[#「月と兎」は中見出し]

兎はお山で
遊びます

お月さんお空で
見てゐます

兎とお月さんは
昔から

誰でも知つてる
お仲よし


[#1字下げ]虫の声[#「虫の声」は中見出し]

虫の音楽 にぎやかで
誰が聞いても 面白い

チロリン チロリン
チロリン チロリン
チンチロ リン リン リン

日暮れごろから 目をさまし
草や小藪の 上に来て

チロリン チロリン
チロリン チロリン
チンチロ リン リン リン

夜は友達 集つて
細いすずしい 声をして

チロリン チロリン
チロリン チロリン
チンチロ リン リン リン


[#1字下げ]おるすです[#「おるすです」は中見出し]

どちらへ つばめは
   いきました

お国へ かへつて
   いきました

つばめの お国は
   どちらです

お国は 南の
   遠くです

海こえ 海こえ
   海こえて

遠くの 遠くの
   お国です


[#1字下げ]兎の綱引き[#「兎の綱引き」は中見出し]

お餅も つかずに
どうした ことやら

エンヤラ ヤツサと
兎の 綱引き

お耳を 振り 振り
どつこい どつこい

すべつて ころげる
負けては ならない

さうとも さうとも
ひつぱれ ひつぱれ

加勢が 来るまで
勝負が つかなきや

月夜に なつても
その綱 放すな

よいとも よいとも
放せば 負けるぞ


[#1字下げ]豚のお鼻[#「豚のお鼻」は中見出し]

豚のお鼻は
ぶうぶうお鼻

小さい時から
お鼻が鳴つた

歩きながらも
ぶうぶう鳴らす

豚のお鼻は
喇叭《ラツパ》のお鼻

お鼻が喇叭で
お鼻が鳴つた

目さへ覚めれば
お鼻を鳴らす

豚のお鼻は
喇叭のお鼻


[#1字下げ]月夜の竹やぶ[#「月夜の竹やぶ」は中見出し]

月夜の 竹やぶ
たん たん 竹やぶ

夜通し
ピカピカ

竹の葉つぱに
何ぢやらう

夜通し ピカピカ
何ぢやらう

星が寝ぼけて
来たのやら

星ぢや ないない
星ぢやない

月夜に生まれた
露の玉

夜通し ピカピカ
まんまるく

竹の葉つぱで
ねんねする


[#1字下げ]狸のいたづら[#「狸のいたづら」は中見出し]

ゴムの毬《まり》は
ポンポコ ポン

狸の太鼓は
腹太鼓

太鼓で毬を
ついたなら

ポンポコ ポンノ ポンポコ ポン

狸も毬も
ポンポコ ポン

軽い瓢箪《へうたん》
ポンポコ ポン

狸の尻尾は
重いから

尻尾で狸が
たたいたら

ポンポコ ポンノ ポンポコ ポン

瓢箪ころげて
ポンポコ ポン


[#1字下げ]あわてた烏[#「あわてた烏」は中見出し]

月夜に烏が
眼をさまし

夜明になつたと
飛び出した

ねぼけて月夜を
忘れてる

あわてた烏は
おかしいな カア カア カア

夜明に烏が
眼をさまし

日暮になつたと
啼き出した

夜明と日暮と
間違へた

あわてた烏は
をかしいな カア カア カア


[#1字下げ]十五夜[#「十五夜」は中見出し]

まるい お月さん
十五夜さん

まんまる お顔で
にこにこと

空の 上から
ハイ 今晩は

誰と お月さん
お友達

ぺつたん ぺつたん
お餅つく

ぴよんぴよん うさぎと
ハイ お友達


[#1字下げ]鳴子[#「鳴子」は中見出し]

鳴子の 綱引け
ガランガラン ガラン

田甫《たんぼ》の 小鳥は
キョロォキョロォ キョロォ

引け引け やれ引け
ガランガラン ガラン

小鳥が そろつて
キョロォキョロォ キョロォ

鳴子だ 鳴子だ
ガランガラン ガラン

飛びませう 逃げませう
キョロォキョロォ キョロォ

逃げぬか 逃げぬか
ガランガラン ガラン

なかなか 飛ばない
キョロォキョロォ キョロォ


[#1字下げ]案山子[#「案山子」は中見出し]

弓矢を握つて
立つてゐる

案山子《かかし》は田甫《たんぼ》の
番兵です

敵の小鳥は
遠くから

案山子を見付けて
逃げていく

簑笠《みのかさ》仕度で
元気よく

来たら射るぞと
身構へた

番兵の案山子は
勇ましい


[#1字下げ]やまがら[#「やまがら」は中見出し]

かやの木山へ
やまがらが

かやの実 とりに
来てゐます

枝から 枝へ
とびうつり

声も 高々
なきながら

かやの木山の
かやの木に

かやの実 とりに
来てゐます


[#1字下げ]朝オキ雀[#「朝オキ雀」は中見出し]

アサオキ スズメガ
オ日サマニ

チン チン ソロツテ
オヤネカラ

オ日サマ オハヨト
イヒマシタ

アサオキ スズメニ
オ日サマモ

ソラニ オカホヲ
ダシナガラ

オハヨウ オハヨト
イヒマシタ


[#1字下げ]大根洗ヒ[#「大根洗ヒ」は中見出し]

ミンナ ナランデ
ダイコンアラヒ

ニイサンモ
ハダシデ

ゴシゴシ ヂヤンプ ヂヤンプ
ゴシゴシ ヂヤンプ ヂヤンプ

タレモ タスキヲ
キリリト カケテ

ネエサンモ
ハダシデ

ゴシゴシ ヂヤンプ ヂヤンプ
ゴシゴシ ヂヤンプ ヂヤンプ


[#1字下げ]雀ト山茶花[#「雀ト山茶花」は中見出し]

山茶花《サザンカ》ノ 花ハ
山茶花ノ 枝ニ
イクツモ 咲イタ

山茶花ノ 下デ
山茶花ノ 花ヲ
見ナガラ 遊ボ

山茶花ノ 咲イタ
山茶花ノ 枝ヘ
雀モ オイデ


[#1字下げ]落葉[#「落葉」は中見出し]

落葉《おちば》の 学校の
生徒さん

風の 
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