吹くたび
一二の三

エンサカ ホイサと
飛びまはる

飛ぶのが 上手な
生徒さん

みんな そろつて
一二の三

まけずに ひらひら
飛びまはる


[#1字下げ]山[#「山」は中見出し]

テテポポ ポツポ と
やまばと が

やまで ラツパ を
ふきました

テテポポ テテポポ
ポツポツ ポツ

テテポポ ポツポ と
やまばとが

やまで ふくのが
じようず です

テテポポ テテポポ
ポツポツ ポツ


[#1字下げ]逃げた小鳥[#「逃げた小鳥」は中見出し]

小鳥は丘や
森がすき

丘で遊んで
森で寝る

籠の中には
丘はない

籠の中には
森はない

逃げた小鳥は
空高く

小さい翼《はね》の
つづくだけ

丘の向かふへ
飛んでいく

森の向かふへ
飛んでいく


[#1字下げ]豆腐屋さんのラツパ[#「豆腐屋さんのラツパ」は中見出し]

朝起き 早起き
豆腐屋さん

お豆腐かついで
ラツパ吹く

トーテトーテ トテトの
トテ トテト

雨が降つても
休まない

風が吹いても
休まない

トーテトーテ トテトの
トテ トテト

街から街へ
吹いていく

優しいラツパ手
豆腐屋さん


[#1字下げ]騎兵[#「騎兵」は中見出し]

みんな ぱかぱか
お馬に乗つて
いつも 騎兵は
勇ましい

みんな お馬も
鉄靴はいて
とつと とつとと
駈《かけ》てゆく

みんな一緒に
いくさの時は
いつも 真先
いさましい


[#1字下げ]おしやべり四十雀[#「おしやべり四十雀」は中見出し]

山で カラカラ カラカラ
おしやべり 四十雀

黒い 黒い 黒いソフトの
黒い 小帽子

白い 白い 白いエプロン
白い チヨツキ

ピーピー カラカラ カラカラ
ピー カラカラ ピー

森で カラカラ カラ
枝から 枝渡り

小さい 小さい 小さいロイドの
小さい 目鏡《めがね》

青い 青い 青い上衣に
青い マント

ピーピー カラカラ カラカラ
ピ カラカラ ピー


[#1字下げ]輪廻し[#「輪廻し」は中見出し]

輪廻し くるくる
面白い

急いで廻せば
早くなる

のろのろ廻せば
おそくなる

とまれば廻らず
直ぐころぶ

転ばず廻れと
かけだすと

くるくる くるくる
よく廻る


[#1字下げ]友だち[#「友だち」は中見出し]

皆さん 皆さん
お友だち

みんなで 仲よく
遊びませう

はねくら なはとび
ランニング

まけても 泣いては
いけません

かつても 自慢は
いけません

かちくら ごつこで
遊びませう


[#1字下げ]雀[#「雀」は中見出し]

雀の朝起き
早いこと

お日さまお顔を
出さぬうち

お目々をさまして
下さいと

坊ちやん 嬢ちやん
呼びながら

軒端で ちんちん
啼いてます


[#1字下げ]橇と少女子[#「橇と少女子」は中見出し]

雪の野原の
遠くから

ちんから ちんから
鈴が鳴る

馬に曳かせて
元気よく

鈴を振り振り
橇《そり》が来る

鈴の鳴るのを
少女子が

留守居しながら
聞いてゐる


[#1字下げ]村のかぢや[#「村のかぢや」は中見出し]

村のかぢやは
早くから
トツテン トツテン
トツテン カン

大鎚《おほつち》小鎚の
鎚の音

つくる鋤《すき》 鍬《くわ》
鎌 唐鍬
トツテン トツテン
トツテン カン

朝から晩まで
いそがしい


[#1字下げ]スキー[#「スキー」は中見出し]

スキーは 愉快で
面白い

つるつる 滑つて
走つてる

下手では スキーは
走らない

すつてん ころりん
よく転ぶ

上手の スキーは
ずんずんと

するする するする
面白く

原でも坂でも
走つてる
[#改ページ]

童謡について一言[#「童謡について一言」は中見出し]

 この童謡集「朝おき雀」は、私が年来主張して来た所謂米英文化に影響されず、郷土即ち本来の日本国民性を護るために聊かなりとも児童の情操教育を培ふ基となれば幸ひであります。それについて童謡の立場から二三挙げて申し述べて見ませう。
 一体童謡は、児童の歌でありますから、児童に判りにくいむつかしい文字やむつかしい意味を避けて、誰にも判るやうに書かなくてはならないのです。それは自然の心から生れて来る童心を中心として書くなり作るなりしなくてはなりません。そこでこの童心を除外したり、無視しては童謡は出来ないのです、その上童謡には異性間の愛着があつてはなりません。異性間の愛着のあるのは民謡ですから、童謡は純真無垢と言はるるのもこの点からであります。また教育の上から注意すべきことであります。
 童謡には往々、犬と話をしたり、馬と話をしたり対人的の取りあつかひをします。何故かと言ふと犬も馬も万物あらゆるものは人間と同じに見るからであります。まことに子供らしいのが童謡でありますから、世にいふ普通の文学とは変つてをります。ここに童謡の童謡たる所以があるのであります。
 さて、この童謡について言ふならば、「赤子は大人の如し」と昔の聖人が言つてゐますがここに言ふ赤子とは赤ン坊の意味でなく純真の心の持主の意味であります。又大人と言つたのも単におとなの意味でなく人々の手本となるべき人の意味であります。今でも目上の人に対して何々尊大人とか書くのと尊敬して書くのと同じ意味であります。要するに「赤子は大人の如し」と言つたのは子供の心には人々の手本となるべき尊い心があると言ふ意味になるのであります。その外にも昔の聖人と言はるる人は言葉が違つてゐても同じ純真さを説いてをります。昔から子供の心は誰でも純真であることがうなづかれます。
 童謡を作るには仮へば水の低きに流るるやうなもので、すらすらと書かれるのが本当です。考へ考へ書かれたのは、すらすらとなりません。児童の教育に差支へのない限りはこの点に指導者は注意を要すべきことであります。
 童話と童謡とは同じ童心から生まれるのでありますが、童話はお話であつて、童謡は歌でありますから、お話と歌の違ひがありますが、どちらも児童のものであります。歌であるだけ童謡は言葉の調子旋律に重きをおきます。どんなことでも童謡になると思ふのは、違ひます。童謡になるものと、ならないものとあります。童謡にならないものを童謡にしようと思ふと苦心を要します。苦心をした上によくは書けないのであります。この点も指導者はよく考へる必要があると思はれます。
 輝き渡る日本の国です。国民性の純真無垢の児童の心を培ふことが、将来のためにも、又、郷土色を多少でも養ふことがわれわれの努めであります。

  昭和十七年五月一日
[#地から1字上げ]野口雨情



底本:「定本 野口雨情 第三巻」未来社
   1986(昭和61)年3月25日第1版第1刷発行
底本の親本:「朝おき雀」鶴書房
   1943(昭和18)年2月28日刊
初出:年賀状「幼年倶楽部」
   1938(昭和13)年1月
   万歳さん「幼年倶楽部」
   1934(昭和9)年1月
   豆マキ「幼年倶楽部」
   1935(昭和10)年2月
   お離さま「コドモアサヒ」
   1933(昭和8)年3月
   森で啼く鳥「コドモノクニ」
   1934(昭和9)年4月
   桜と小鳥(原題 小鳥のお母さん)「幼年倶楽部」
   1935(昭和10)年4月
   田螺の泥遊び「幼年倶楽部」
   1934(昭和9)年8月
   ひよこ「幼年倶楽部」
   1938(昭和13)年3月
   雲雀と蛙「婦人子供報知」
   1931(昭和6)年6月
   燕の泥塗り「幼年倶楽部」
   1935(昭和10)年5月
   目高「幼年倶楽部」
   1933(昭和8)年4月
   沼の鮒釣り「幼年倶楽部」
   1937(昭和12)年6月
   螢狩り「幼年倶楽部」
   1935(昭和10)年6月
   どんと波「コドモノクニ」
   1932(昭和7)年9月
   オハナバタケ「ツバメノオウチ」
   1932(昭和7)年8月
   お風呂「幼年倶楽部」
   1938(昭和13)年8月
   お池つくり「幼年倶楽部」
   1937(昭和12)年8月
   すつぽん亀の子「幼年倶楽部」
   1934(昭和9)年12月
   七夕(原題 タナバタマツリ)「セウガク二年生」
   1933(昭和8)年7月
   兎の綱引き「しやぼん玉」
   1932(昭和7)年10月
   豚のお鼻「幼年倶楽部」
   1937(昭和12)年3月
   月夜の竹やぶ「童謡」
   1933(昭和8)年3月
   あわてた烏「コドモノクニ」
   1933(昭和8)年11月
   鳴子「幼年倶楽部」
   1932(昭和7)年11月
   豆腐屋さんのラツパ(原題 とうふやさん)「幼年倶楽部」
   1932(昭和7)年10月
   おしやべり四十雀「童謡と童話」
   1933(昭和8)年5月
入力:川山隆
校正:noriko saito
※「*」は注釈記号です。底本では、「※[#「さんずい+兆」、第3水準1−86−67]児河」にかかるルビ「ドルガ」の上に、ルビのように付いています。
2010年4月18日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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