の上まで行きますと、山の神様は、木の根へ腰をかけて、長い真白な髭を撫でながらおゐでになりました。
お母さんと二人の姉妹《きやうだい》の顔を見ると、すぐ、山の神様は、
『よしよし、判つた。椋鳥《むくどり》椋鳥』とおつしやつて、とんとんと杖で地面をおたたきになりますと、椋鳥が飛んでまゐりました。
『椋鳥、お前の国へこの姉妹をつれて行くのぢや。』
『かしこまりました』と椋鳥は、二人の姉妹に白い布で目隠しをして、大《おほき》な椋の木の空洞《うつろ》の前へつれてゆきました。
『この中に一本道があるから、何んにも考へずに、真直に歩いて行くんだよ』と二人の姉妹を空洞の中へいれて入口の戸をガチンと締めてしまひました。
二人は、真暗い空洞の中の一本道を椋鳥に云はれたやうに歩いて行きました。もう一里も来たと思ふ頃、そつと目隠しをとつて見ますと、そこは広い広い野原でありました。野原の中には、自分と同じ歳位の子供がそつちにもこつちにも立つてをりました。
姉のお杉は、一人の子供に、
『今日は』と云ひましたが、その子供は、石地蔵さんのやうに黙つてをりました。聞えないのか知らと、
『今日は、今日は』と大《おほ
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