川はここでも本流支流の二つにわかれる。私は支流の須川にそふて上つていつた。およそ二里の川上に湯の平温泉がある。更に二里の川上に花敷温泉がある。二つともこの温泉が川底からわき出してゐるのは奇観である。童謡一篇。
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   ◇
わいたわいたわいた
川からわいた

わいてこぼれて
須川へ流る

流れ流れて
吾妻川へ

もまれもまれて
大利根川へ

ごんぼごんぼごんぼ
こぼれてわいた
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   草津温泉の名物

 湯の平温泉から山を一つ越えると『お医者さんでも草津の湯でも……』の草津温泉である。草津温泉には名物の『湯もみ』がある。名所の『賽の河原』もある。不思議な『氷谷』もある。この三つは全く他では見ることの出来ない草津温泉のほこりである。民謡三篇。
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   ◇
湯揉みやはじまる
湯長《ゆちやう》さんの音頭
音頭はづまにや
湯が揉めぬ
   ◇
賽の河原で
すまぬと思たが
石の地蔵さま
撫ぜてみた
   ◇
氷谷かよ
夏でも寒い
岩の中から
風がわく
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 私は草津温泉を立つて、吾妻川本流の水源地、上信国
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