十里間の流域を『魚不棲《うをすまず》川』と名づけてみた。民謡二篇。
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   ◇
上州吾妻
宿世の縁か
魚の棲めない
川もある
   ◇
魚の棲めない
吾妻川の
水を眺めて
暮らせとは
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   山間特有の美人郷

 東京では素顔の女は滅多に見ることは出来ないが、ここでは皆素顔の女ばかりである。しかも美人の多いのは、山間特有の天恵であらう。民謡三篇。
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   ◇
姉さ こつち見な
ちよいと顔見せな
頬の笑窪は
誰にもろた
   ◇
頬の笑窪は
お母さんがくれた
転んで失《なく》すなと
言ふてくれた
   ◇
切れる鼻緒の
下駄ならいやだ
ころびやお母さんに
しかられる
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 素顔の美人は見ることが出来てもさすがは山間のへき地だけに、東京で見るやうなモダン・ガールは見ることは出来ない。童謡一篇。
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   ◇
モダン・ガール やい
ゐないか やい

ゐたら縞蛇
おつかけるぞ

縞蛇 やい
モダン・ガール やい

ゐないか やい
モダン・ガール やい

ゐたら縞蛇
おつかけるぞ

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