おれも くぐろか
子供と共に
くぐろよー


 弁慶の鐘

むかし
むかしの
ことだちけ

鐘から
鏡が
出ただちけ

むかし
むかしの
ことだちけ

弁慶さんが
かづいた
鐘だちけ


 貝遊び

一つ 貝殻
拾ひませう

二つ 貝殻
拾ひませう

お歳の 数ほど
拾ひませう

一つ 貝殻
数へませう

二つ 貝殻
数へませう

お歳の数ほど
数へませう


 和歌の浦

船は帆かけて
四国へ
渡る

沙を踏み踏み
啼いた啼いた
千鳥

波はざんぶと
渚に
寄せる

かけて歩いて
啼いた啼いた
千鳥


 霜柱

ザツク ザツク
踏んだ
踏んだ
霜柱

雀に
踏ませて
遊ばせよう

踏んだ 踏んだ
ザツク
ザツク
霜柱

雀も
踏み踏み
遊んでる


 お乳飴

お乳 お乳と
泣く児のお母《つか》さん

鵜戸《うど》の窟《いはや》の
お乳飴なめた

 トドロ ドンドン
 サーラ サラ

鵜戸のお乳飴
お母さんがなめた

乳なしお母さんの
乳が出た

 トドロ ドンドン
 サーラ サラ


 観音のおびんづる

観音さんの おびんづるは
鼻を撫でられる

撫でやれ 撫でられ
鼻ぴく おびんづるになつちやつた

観音さんの おびんづるは
顋《あご》を撫でられる

撫でられ 撫でられ
顋なし おびんづるになつちやつた

観音さんの おびんづるは
顋なし鼻ぴく おびんづる


 姨捨山

姨捨山《をばすてやま》に
捨てられた
姨は帰つて来なかつた

 山から
  山へ
 山彦は

 谷から
  谷へ
 山彦は

山|時鳥《ほととぎす》は
帰つても
姨は帰つて来なかつた


 阿弥陀池

大阪堀江の
お寺の池は
どぶどぶ泥池だ

百済《くだら》から来た
お阿弥陀《あみだ》さまは
どぶんと捨てられた

今は 信濃の
善光寺さまの
お阿弥陀さまだ

むかし 堀江の
どぶどぶ池に
どぶんと捨てられた


 長柄の橋

ここは大阪の どこの町
ここは長柄《ながら》の 町つづき

長柄の橋は 人柱
雉子雑子 啼くな 雉子啼くな

雉子も啼かずば 打たれまい
この児も泣かずば 遣《やら》れまい

おー おー 恐い おー恐い
雑子雉子 啼くな 雉子啼くな


田甫の狐

 重い車

牛の顔を 見てゐたれば
涙がこぼれた

重い車を 曳かせられて
泣いてゐるんだよ

可哀想で 可哀想で

前へ 次へ
全11ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング