女の子
異人さんに つれられて
行つちやつた
横浜の 埠頭《はとば》から
船に乗つて
異人さんに つれられて
行つちやつた
今では 青い目に
なつちやつて
異人さんのお国に
ゐるんだらう
赤い靴 見るたび
考へる
異人さんに逢ふたび
考へる
螢のゐない螢籠
螢のゐない 螢籠
螢は
飛んで 逃げました
今朝目がさめて 見たときに
螢は
飛んで 逃げました
青い ダリヤの葉の上を
急いで
飛んで 逃げました
高い お庭の木の上を
急いで
飛んで 逃げました
螢のゐない 螢籠
さびしい
籠に なりました
ひばり
雲雀《ひばり》は歌を
うたつてる
畑の歌を
うたつてる
朝から晩まで
うたつてる
菜種が咲いたと
うたつてる
げんげが咲いたと
うたつてる
ピーチー ピーチー
うたつてる
月の夜
機織《はたおり》虫は
月の夜に
芒《すすき》にとまつて
機を織る
カンカラ コン
カンカラ コン
まだ夜は明けない
明けないと
芒にとまつて
機を織る
カンカラ コン
カンカラ コン
くたびれこま
かんぶり ふりふり
かんぶり ふりふり
くたびれました
くたびれました
赤いこまが
くたびれました
かんぶり ふりふり
かんぶり ふりふり
くたびれました
くたびれました
青いこまが
くたびれました
海ひよどり
磯にとまつて
海|鵯《ひよどり》は
海の向ふの
夢をみた
海の向ふに
小さい船が
赤い帆かけて
走つてる
赤い帆かけた
小さい船に
いつか別れた子供が
乗つてる
船と子供を
海鵯は
磯にとまつて
夢にみた
河原の河童
夜更けに 子供が
歩いてる
頭に お皿が
載つてゐた
河原の 河童の
子供だよ
河原で 夜更けに
火が燃える
雨夜の晩だに
火が燃える
河童の 子供が
燃すんだよ
鳩さんはだし
少女『鳩さん はだしで
どこへゆく
鳩『遠い田舎へ
お使ひに
少女『鳩さん 急いで
いつておいで
鳩『はだしで 急いで
いつて来ましよ
少女『鳩さん あばよ
鳩『嬢《じよ》つちやん さよな
少女『鳩さん 急いで
いつておいで
海女が紅
港の 空に
海女が紅《べに》
刷いた
港の 空に
赤い帯
ほした
信濃の国も
夕焼け
焼けるぞ
信濃の子供
帯まで
焼ける
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