少女と海鬼灯
野口雨情

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)お家《うち》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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 ある日、みつ子さんがお座敷のお縁側で、お友達の千代子さんと遊んでゐますと、涙ぐんだ小さな声で唄が聞えて来ました。

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わたしの お家《うち》は
海なのよ
わたしの姉さん
母さんは
御無事で お家に
居《を》るでせうか

わかれて来てから
もう二年
一度もたよりは
ないけれど
お家に 御無事で
居るでせうか
[#ここで字下げ終わり]

 唄は、ほんたうに哀《あはれ》ツぽい悲しさうな声で又聞えました。

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渚の沙《すな》さへ
子があれば
わかれて逢はない
子があれば
雨風吹いても
思ふでせう

千代ちやん みつちやん
千代子さん
みつちやん 千代ちやん
みつ子さん
雨風吹いても
思ふでせう
[#ここで字下げ終わり]

『あら』とみつ子さんは『千代子さんお聞きなさい。お庭の土の中でうたつてゐるんだわ』とびつくりして云ひました。
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