、唄は又聞えて来ました。
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わたしは お庭へ
捨てられて
夜昼 ひとりで
泣きました
どなたも 迎ひに
来てくれず
捨てらればなしに
なりました
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『土の中でうたつてるのは誰?』とみつ子さんと千代子さんが大《おほき》な声で云ひますと、
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わたしは 海の
鬼灯《ほほづき》よ
わたしは お庭へ
捨てられて
今では お庭の
土の下 土の下
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『まア、鬼灯がうたつてるんだわ』『掘つてみませうよ』と二人は、小さい草引鍬で、この辺か知らと掘りますと、色のあせた海鬼灯が出て来ました。
『今しがた、うたつたのはお前なの』と訊きますと、『わたしです』と海鬼灯は、うれしさうに涙を浮べて、『お母さんや姉さんに逢ひたいから海へ帰して下さい』と二人にたのみました。みつ子さんも千代子さんも可哀想に思つて、海鬼灯を木の葉の上へ乗せて、
『かうして乗つてゐると海へゆけるからね』と裏の川へ持つていつて流してやりました。
海鬼灯は、木の葉の上に捉《つかま》つて、
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情は他人のためならず
御恩は必
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