にとつても可なりに強い喜びでした。
「女王」に贈る花輪は、少年少女《こどもたち》が皆で野の草花を採り集めて造る約束でした。野原に行くと、野菊や藤袴や、みやこ草や、みそはぎやが錦絵のやうに咲き乱れてゐるのでした。まめ菊[#「まめ菊」に傍点]の大輪を見つけ出して高く捧げて喜ぶ少年《こども》など、野は秋のよろこびに満ち充ちてゐました。
花輪が出来上ると、トム[#「トム」に傍点]ちやんと仲よしのしげの[#「しげの」に傍点]さんがそれを持つ、そしてそれを取り巻く皆が「愛の歌」を合唱《コーラス》しながらトム[#「トム」に傍点]ちやんのお家の方へ繰り出すのでした。
トム[#「トム」に傍点]ちやんが、窶《やつ》れたお母さまの、いまスヤスヤ[#「スヤスヤ」に傍点]と眠つた枕辺《まくらもと》に、静かにお坐りしてゐる時に、遠くから少年少女のコウラスが聞えてきました。
「あ、友達《みなさん》だわ」
トム[#「トム」に傍点]ちやんはさう言つて、静かにお母さまの枕許を抜足しました。トム[#「トム」に傍点]ちやんは、村の少年少女が、花輪を持つて自分を迎へに来たことが解つたのでした。で、子供達の騒《さわぎ》が、
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