子供に化けた狐
野口雨情
−−−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)梟《ふくろふ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−−−
子供に化けて、大人をだます悪い狐がをりました。
三五郎と云ふ百姓が、馬を曳いて帰つて来ますと、道の端に七八つ位の一人の子供が泣いてゐました。
三五郎は、狐が化けてゐるのだと気づきましたから、わざと知らない振りをして通りすぎようとしました。子供は三五郎の方を見い見い余計に泣きました。
どこまでも知らない振りをして三五郎が通つて来ますと、子供は大声をあげて泣き泣き馬の後をついて来ました。
さうするうちに、急に日が暮れて来て、あたりが薄暗くなつてしまひました。まだ日の暮れる筈のないのに、不思議だとは思ひましたが、空にはお星さまさへチラチラ出て、遠くの森で梟《ふくろふ》の啼く声さへ聞えました。
後から泣き泣きついて来た筈の子供は、こんどは、いつの間にか三五郎の前に立つて泣き泣き歩いてゐました。
『己《おれ》はちやんと判りきつてゐるのに、知らずにだまさうとする馬鹿な狐だ』と三五郎
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング