子供に化けた狐
野口雨情

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)梟《ふくろふ》

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 子供に化けて、大人をだます悪い狐がをりました。
 三五郎と云ふ百姓が、馬を曳いて帰つて来ますと、道の端に七八つ位の一人の子供が泣いてゐました。
 三五郎は、狐が化けてゐるのだと気づきましたから、わざと知らない振りをして通りすぎようとしました。子供は三五郎の方を見い見い余計に泣きました。
 どこまでも知らない振りをして三五郎が通つて来ますと、子供は大声をあげて泣き泣き馬の後をついて来ました。
 さうするうちに、急に日が暮れて来て、あたりが薄暗くなつてしまひました。まだ日の暮れる筈のないのに、不思議だとは思ひましたが、空にはお星さまさへチラチラ出て、遠くの森で梟《ふくろふ》の啼く声さへ聞えました。
 後から泣き泣きついて来た筈の子供は、こんどは、いつの間にか三五郎の前に立つて泣き泣き歩いてゐました。
『己《おれ》はちやんと判りきつてゐるのに、知らずにだまさうとする馬鹿な狐だ』と三五郎
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