一」は中見出し]

薔薇の花さへ
    真赤に咲くに
二度と帰らぬ
    わかれた恋よ

夢か 涙か
    流れの水か
わたしや口惜《くやし》い
    捨てたか恋よ

[#2字下げ]二[#「二」は中見出し]

薔薇の花さへ
    真赤に咲くに
帰つて下さい
    わかれた恋よ

夢も 涙も
    流れの水も
わたしや口惜い
    帰らぬ恋よ

[#2字下げ]三[#「三」は中見出し]

薔薇の花さへ
    真赤に咲くに
忘れられない
    せつない恋よ

夢と 涙と
    浮世の風に
わたしや口惜い
    しぼんだ恋よ


[#1字下げ]千羽烏[#「千羽烏」は大見出し]

生れ故郷の
    父母《ととかか》さまよ

今日《けふ》もわたしは
    糸とりながら

父と云ひました
    母と云ひました

千羽烏の
    カホカホ声よ

父が恋しい
    母なつかしい


[#1字下げ]かなしい海[#「かなしい海」は大見出し]

ざんぶざんぶと
    越後の海は
恋の海かよ
    海鵯《うみひよどり》よ

  はなればなれに
  波々打つな

同じ海でも
    越後の海は
ざんぶざんぶと
    かなしい海か

  はなればなれに
  波々打つな


[#1字下げ]恋は命よ[#「恋は命よ」は大見出し]

[#2字下げ]一[#「一」は中見出し]

恋はわがこと わが命
   ラララ ランララ ランランラン

命惜くば 恋せぬものよ ホンニ
恋はネ 命よ 女の命
   ラララ ランララ ランランラン

どうせこの世に 生れたからはヨ
恋はわがこと わが命
   ラララ ランララ ランランラン

[#2字下げ]二[#「二」は中見出し]

吹けよ恋風 わが命
   ラララ ランララ ランランラン

捨てる恋なら 恋せぬものよ ホンニ
恋はネ 押せ押せ 女の命
   ラララ ランララ ランランラン

どうせ短い この世の中はヨ
吹けよ恋風《こひかぜ》 わが命
   ラララ ランララ ランランラン

[#2字下げ]三[#「三」は中見出し]

恋の細道 わが命
   ラララ ランララ ランランラン

命なげ出せ 恋するからはよ ホンニ
恋はネ衿《ほこり》よ 女の衿
   ラララ ランララ ランランラン

どうせ女と 生れたからはヨ
恋の細道 わが命
   ラララ ランララ ランランラン


[#1字下げ]金網ぐらし[#「金網ぐらし」は大見出し]

尾張名古屋の
    鯱鉾《しやちほこ》さんは
高い櫓《やぐら》で
    金網ぐらし
津島女も
    鯱鉾さんも
同じ名古屋の
    風ざらし


[#1字下げ]いととの虫[#「いととの虫」は大見出し]

青い月夜だ
    いととの虫よ

河原蓬《かはらよもぎ》は
    末《うち》から枯れる

青い月夜も
    いつまで続く

鳴いてくれるな
いととの虫よ


[#1字下げ]つばくらめ[#「つばくらめ」は大見出し]

浜町へ 来て幾年になるだらう
物干台の
つばくらめ
お前も旅の鳥だわネ

昨日《きのふ》までなにも云はずにゐたけれど
わたしも旅の
鳥なのヨ

もう わたしや遠いところへ
ゆくんだよ
物干台の
つばくらめ

今日はわかれだ
泣かないか


[#1字下げ]播磨夕凪[#「播磨夕凪」は大見出し]

播磨夕凪
皆恋ごころ
そそる そそられる
そそられる
そそる


[#1字下げ]ジプシーの歌[#「ジプシーの歌」は大見出し]

可愛女も
    今日《けふ》きりやめよう
夜は酒場で
    コツプ酒飲んで
酔ふて唄でも
    うたふて暮らそ

国をはなれた
    ジプシーの鳥は
旅のさきから
    さきへと渡る
どうせわたしも
    ジプシーの鳥さ

金のあるうちや
    コツプ酒飲んで
昼も酒場で
    コツプ酒飲んで
酔ふて歌でも
    うたふて暮らそ


[#1字下げ]松葉牡丹[#「松葉牡丹」は大見出し]

物干台に
    咲く花は
松葉牡丹で
    ありやんした

わたしはほんとに
    はづかしい
お暇《いとま》もろうて
    帰りやんす


[#1字下げ]芒の蔭[#「芒の蔭」は大見出し]

迷ひ子は待つても
帰らない

田甫の 遠くで
啼く狐

迷ひ子はゆふべも
帰らない

塩たく渚で
啼く狐

迷ひ子は 迷ひ子は
帰らない

芒《すすき》の蔭から
啼く狐


[#1字下げ]黒髪[#「黒髪」は大見出し]

親も捨てませう
   捨てろとならば

髪も切りませう
   この黒髪も

いつそせつない
   わたしの胸を

刺して殺して
   お呉れよ 君よ


[#1字下げ]五年すぎたら[#「五年すぎたら」は大見出し]

前へ 次へ
全7ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング