トンパタ トンパタ
    トン トン パタ パタ


[#1字下げ]薄水色[#「薄水色」は大見出し]

足が向いた 向いた
銀座の方へ

赤い銀座の
カフエーの酒よ

可愛|竪絽《たてろ》の
薄水色《うすみづいろ》よ

足の軽いこと
この軽いこと


[#1字下げ]米山小唄[#「米山小唄」は大見出し]

思ひつめたぞ
  米山《よねやま》さまよ

生きて暮らそと
  恋路で死のと

わしの心も
  こうなりや闇ぢや

どこで照る日も
  照る日は同じ

故郷《くに》も捨てたぞ
  この土地去るぞ


[#1字下げ]旅の身ぢやとて[#「旅の身ぢやとて」は大見出し]

旅の身ぢやとて
  さうぢやとて

 明日はわかれて
    ゆく気かい

たづねて来《こ》よとて
   さうぢやとて

  このままわかれて
     ゆく気かい

待つてて呉れとて
   さうぢやとて

   どうでもわかれて
       ゆく気かい


[#1字下げ]上州街道[#「上州街道」は大見出し]

上州街道は
  春の日が永い

ホイサホイサと
  繋《つな》ぎ馬 通る

唄の声やら
  茶店《ちやみせ》の茶やら

ハラリハラリと
  まだ日は高い


[#1字下げ]焦土の帝都[#「焦土の帝都」は大見出し]
[#ここから4字下げ]
大正十二年九月一日、大震災につぎて大火災おこり帝都の大半焦土となる。
[#ここで字下げ終わり]

[#2字下げ]一[#「一」は中見出し]

焼野原見りや
涙が落ちる 落ちるよ

  火攻め 火の海
  火の地獄 地獄よ

[#2字下げ]二[#「二」は中見出し]

ただの一夜《いちや》で焼野の原と
なろと思ほか 思はりよか

  なろと思ほか
  火の地獄 地獄よ

[#2字下げ]三[#「三」は中見出し]

焼野原なら
雉子《きぎす》も啼こに 啼こによ

  泣くは火攻めの
  人の群れ 人の群れ

[#2字下げ]四[#「四」は中見出し]

親は子を呼び
子は親呼んで 呼んでよ

  声は渦巻く
  焔は狂ふ 狂ふよ

[#2字下げ]五[#「五」は中見出し]

これが都の
昨日《きのふ》のすがた すがたよ

  生きて火攻めは
  この世の地獄 地獄よ



底本:「定本 野口雨情 第一巻」未来社
   1985(昭和60)年11月20日第1版第1刷発行

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