に来てゐる
蚊喰鳥《かくひどり》

友なつかしい
今日の日も
桜の蔭に
暮れて行く

桜の蔭の
たそがれが
なぜなつかしい
蚊喰鳥


[#1字下げ]また来よつばめ[#「また来よつばめ」は大見出し]

月日立つのは
  つばめの鳥よ
はやいものだと
    さう思へ

南風吹きや
  また来よつばめ
桜咲いたら
    来よつばめ

南風吹きや
  つばめの鳥よ
わしが待つぞと
    さう思へ


[#1字下げ]千代の松原[#「千代の松原」は大見出し]

千代《ちよ》の松原
ひよろひよろ松よ

こぼれ松葉の
わたしぢやほどに

逢ひに来たのか
泣かせに来たか

逢ひに来たなら
出て逢ひませうに

泣けと云ふなら
わしや泣きませうに

唄で流して
横丁を通る


[#1字下げ]背戸山[#「背戸山」は大見出し]

狐ヤ背戸山さ
   来ちやコンと啼いた

背戸の松山の
   松|伐《き》つてしもと

狐ヤ背戸山さ
   来なくなつた


[#1字下げ]飛騨にて[#「飛騨にて」は大見出し]

山にや
毎日 寒い風吹くに
飛騨の高山
渡り鳥や
渡る

渡りなされよ
富山の 山にや
風は吹いて
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