はつらかろ
待たるる身より

伏木港《ふしきみなと》の
船頭さん達《だち》よ


[#1字下げ]蘆枯れ唄[#「蘆枯れ唄」は大見出し]

蘆が枯れたら
どこで逢ひませう

前の河原は
石まで枯れるし

蘆が枯れたら
どこで逢ひませう

裏の畑は
土まで枯れるし

蘆が枯れたら
どこで逢ひませう

蘆の枯れ葉の
蔭で逢ひませう


[#1字下げ]おけらの唄[#「おけらの唄」は大見出し]

おけらの唄の
さびしさに
窓にもたれて
すすり泣く

まぼろし草《さう》も
コスモスも
花は昔の
ままで咲く

おけらの唄の
さびしさに
畳の上に
伏して泣く


[#1字下げ]鶫[#「鶫」は大見出し]

今日も鶫《つぐみ》が
丘に来て啼いた
おれも泣きたい 鶫の鳥よ

空は乳色に
また日が暮れる

死んで別れた
人ではないし
忘れようとて 忘らりよか


[#1字下げ]錆[#「錆」は大見出し]

窓の格子によりかかり
「いつまた来るの」と
泣く女

錆た庖丁の かなしくも
「はかない身だよ」と
さうか知ら

ただ明易い 夏の夜の
街はあかるい
青すだれ

磨《と》いでも磨いでも 庖丁の
錆は磨いでも

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