雨《しぐれ》は
夜来ちや
降りやる
萱《かや》の枯れ穂に来ちや
降りやる

  □

塩の塩釜《しほがま》
石の釜
欲しや
鉄の錆釜ぢや
塩アたけぬ


[#1字下げ]つばくらめ[#「つばくらめ」は大見出し]

浜町《はまちやう》へ 来て幾年になるだらう
物干台の
つばくらめ
お前も旅の鳥だわネ

昨日《きのふ》までなにも云はずにゐたけれど
わたしも旅の
鳥なのヨ

もうわたしや遠いところへ
ゆくんだよ
物干台の
つばくらめ

今日《けふ》はわかれだ
泣かないか


[#1字下げ]お艶[#「お艶」は大見出し]

お艶《つや》が風呂にはいつてゐると
若い男が
だましに来た
小さい声でだましてゐる

お艶がざぶり湯をかけてやると
男はうろうろしてゐたが
裏から
すーつと逃げて行つた

馬は厩《うまや》で
馬堰棒《ませんぼ》を
がらんがらんと鳴らしてゐる
天の川は北から西へ流れてゐた


[#1字下げ]旅の鳥[#「旅の鳥」は大見出し]

山に春雨
   野に茅花《つばな》
花のかげかは
   つばくらめ
去年|常陸《ひたち》の
   ふるさとの
山に来もした
   つばくらめ

雨は降れども
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