咲く頃か
ほととぎすが啼く
ほととぎすが啼く
[#1字下げ]風の音[#「風の音」は大見出し]
[#2字下げ]一[#「一」は中見出し]
裏戸覗きやる
口笛ヤ吹きやる
わたしや気が気ぢや
ゐられない
逢へる身ならば
逢ひにも出よが
元のわたしの
身ではない
[#2字下げ]二[#「二」は中見出し]
戸縁《とぶち》叩きやる
小声ぢや呼びやる
とても気が気ぢや
ゐられない
空の星でも
縁なきや流る
薄い縁だと
おぼしやんせ
[#2字下げ]三[#「三」は中見出し]
石は投げしやる
雨戸にやあたる
もうも気が気ぢや
ゐられない
この家《や》去れとて
石投げしやるか
石に言はせに
来やしやるか
[#2字下げ]四[#「四」は中見出し]
去つちやくれろと
石投ぎやしない
風の音だと
思やしやれ
風の音だと
よく言《ゆ》ふてくれた
窓にもたれて
泣いたぞえ
[#1字下げ]畑ン中[#「畑ン中」は大見出し]
(ある農夫の歌の VARIATION)
真昼間《まつぴるま》でごわせう
畑ン中に、田鼠《むぐらもち》が一匹
斑犬《ぶち》に掘りぞへられて
イヤハヤ
むんぐらむんぐら居やあした
畑の土は、開闢このかた、黒いもんか
どなもんか
真《まこと》の所、烏に聞いて見やあすべい
畑ン中は、青空天上、不思議はごわすめえ
喉笛鳴らした ケー ケー ケー
鶏《かしは》が走つた
こりやまた事だと魂消《たまげ》払つて見てやあした。
蜻蛉《あけづ》が一匹
追つかけ廻つた、啄《つつ》くわ 啄くわ
ぶつ飛びあがつた、飛んだわ 飛んだわ
蜻蛉は御運《ごうん》でござりあした
地主様の一人娘が
娘に二種《ふたいろ》何処にごわせう
どどの詰りが
エヘン
孕み女子《をなご》になりやあした
畑ン中の豆ン花|何《ど》なもんだ
朝つぱらから何事ぶたずに
べろりと咲いてござりやあす
[#1字下げ]道楽薬師[#「道楽薬師」は大見出し]
願ひかけました
米山《よねやま》さまへ
縁をつないで
お呉れよとかけた
末はどうでも
お薬師さまよ
せつぱ詰つた
つないでお呉れ
帯で結んでも
切れる縁は切れる
どうせ米山も
お道楽薬師
切れるまでにも
つないでお呉れ
[#1字下げ]蚊喰鳥[#「蚊喰鳥」は大見出し]
春も末かよ
葉桜の
蔭
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