つね子さんと兎
野口雨情

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)草履《ぞんぞ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)花|簪《かんざし》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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ある日、つね子さんが、いつものやうにお庭へ出て、

[#ここから2字下げ]
兎来い 兎来い
赤い草履《ぞんぞ》買つてやろ

兎来い 兎来い
赤い簪《かんざし》買つてやろ

兎来い 兎来い
ぴよんこぴよんこはねて来い
[#ここで字下げ終わり]

と、『兎来いの唄』をうたつて遊んでをりますと、
『今日は、今日は』と云つて一疋の子兎が来ました。
『まア お前は子兎ね』とつね子さんが云ひますと、
『さうです。わたしは子兎ですよ。あなたのお唄が聞えたので参りました』
と子兎はなつかしさうに云ひました。
『あら、わたしの唄が聞えたの。お前のお家《うち》は何処《どこ》なの』と訊きますと、
『わたしのお家ですか。ほら、お月さまの中にお餅を搗《つ》いてゐるでせう。あれはわたしの伯父さんなんですよ。わたしのお家も矢つぱりお月さまの
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