ヤン
晴れりや青空
馬よ
日は凪ぎる
[#1字下げ]秋の月[#「秋の月」は中見出し]
お月さま見てたりや
とぼしくなつて来た
お月さま出てても
秋の月
薄《すすき》にゆられて
夢をみてる
霧たちのぼれよ
山の端《は》に
お月さまみた夢
青い夢
片袖ぬらした
夢をみてる
[#1字下げ]高原颪[#「高原颪」は中見出し]
[#ここから4字下げ]
(高原颪は日光の連山一帯より吹きおろす山風)
[#ここで字下げ終わり]
寒い筈だよ
高原颪《たかはらおろし》ヤ
馬の耳まで
凍《え》てかへる
馬よ 寒かろ
高原颪ヤ ササホイ
小雪交りで
吹きおろす
小雪ヤチラチラ
上州は雪ぢや
可愛《かは》ヤ 機場も
もう雪ぢや
上州雪降りや
夜明けの星も ササホイ
白く白んで
冴えかへる
[#改段]
古巣わすれて[#「古巣わすれて」は大見出し]
[#1字下げ]古巣わすれて[#「古巣わすれて」は中見出し]
古巣わすれて
小鳥の
子《こ》等《ら》は
どこにゐるやら
帰らない
[#1字下げ]この子を寝せて[#「この子を寝せて」は中見出し]
鳩ぽつぽ啼くから
帰らぬか
帰ります 帰ります
あの山越えて
鳩ぽつぽ啼くのに
帰らぬか
帰ります 帰ります
あの川越えて
鳩ぽつぽ啼いても
帰らぬか
帰ります 帰ります
この子を寝せて
[#1字下げ]蝙蝠[#「蝙蝠」は中見出し]
草履投げたら
蚊喰ひの鳥は
蚊かと思《おも》てか
だまされてるに
草履|慕《しと》ふて
飛びさかる
[#1字下げ]烏と南瓜[#「烏と南瓜」は中見出し]
南瓜畑に
烏が来てる
(ドドンガドン)
烏ア南瓜を
ながめてる
烏見てたりや
烏も見てる
(ドドンガドン)
烏ア柿の木に
飛んでいつた
南瓜叩いて
数へてみたりや
(ドドンガドン)
烏アちよろりと
見て啼いた
南瓜欲しけりや
こつち来な烏
(ドドンガドン)
烏ア黙つて
あつち向いた
[#1字下げ]ほととぎす[#「ほととぎす」は中見出し]
馬鈴薯《じやがたらいも》の
花咲く頃にや
ほととぎすア啼く
聞きやしやんせ
海の上越えて
来て啼く声か
山の上越えて
来て啼く声か
ほととぎすア啼く
聞きやしやんせ
[#1字下げ]豆の花[#「豆の花」は中見出し]
裏へ出て来ちや
畑を見てる
盆が来るから
姉《あね》さん達よ
豆の花でも
咲いたのか
[#1字下げ]磯原小唄[#「磯原小唄」は中見出し]
[#2字下げ]一[#「一」は小見出し]
末の松並《まつなみ》
東は海よ
吹いてくれるな
汐風よ
風に吹かれりや
松の葉さへも(オヤ)
こぼれ松葉に
なつて落ちる
[#2字下げ]二[#「二」は小見出し]
お色黒いは
磯原生れ
風に吹かれた
汐風に
啼いてくれるな
渚の千鳥(オヤ)
末の松並ア
風ざらし
[#ここから4字下げ]
(註。磯原町は茨城県海岸の勝地である)
[#ここで字下げ終わり]
底本:「定本 野口雨情 第一巻」未来社
1985(昭和60)年11月20日第1版第1刷発行
底本の親本:「おさんだいしよさま」紅玉堂書店
1926(大正15)年6月10日刊
初出:あの山越えて(原題 山越えて)「講談倶楽部」
1925(大正14)年12月
春の月「令女界」
1925(大正14)年3月、10月
観音さま「新進商人」
1925(大正14)年4月
夜明し千鳥(一部改作)「のきばすずめ」東華書院
1925(大正14)年2月刊
軒端雀「のきばすずめ」東華書院
1925(大正14)年2月刊
菜の花踊り「行楽」
1925(大正14)年4月
娘と船大工「現代」
1925(大正14)年4月
恋の巣立ち「婦人倶楽部」
1925(大正14)年4月
鴫の声「少女の国」
1926(大正15)年1月
笠松機場唄(原題 機場唄)「キング」
1926(大正15)年5月
籔鶯「婦人画報」
1925(大正14)年1月
梅に鶯「婦人倶楽部」
1925(大正14)年2月
武蔵野にて(原題 雲雀の唄)「桂月」
1926(大正15)年4月
野雀・雀「令女界」
1925(大正14)年12月
人形さんよ「のきばすずめ」東華書院
1925(大正14)年2月刊
因幡夕焼(原題 因幡の夕焼)「婦人倶楽部」
1926(大正15)年1月
行々子(原題 よしきり)「日本詩集 一九二六版」
1926(大正15)年5月
鯉の滝登り「雄弁」
1926(大正15)年1月
春の来る日「令女界」
1925(大正14)年1月
そらとぶ鳥よ「婦人倶楽部」
1925(大正14)年11月
踵「抒情詩」
1925(大正14)年3月
お百姓生れ(原題 田舎者の唄)「日本民謡」
1925(大正14)年9月
麦の芽「婦人画報」
1925(大正14)年1月
わしが鳥なら(原題 ヤンレサホイ)「講談倶楽部 臨増」
1926(大正15)年5月10日
茶ツ葉「詩人倶楽部」
1926(大正15)年4月
鐘になりたや「雄弁」
1924(大正13)年11月
秋風「婦女界」
1924(大正13)年10月
はぐれ烏(一部改作)「雨情民謡百篇」新潮社
1924(大正13)年7月刊
御山小唄「キング」
1925(大正14)年8月
秋の月「婦人世界」
1925(大正14)年9月
高原颪「婦人画報」
1925(大正14)年1月
豆の花「日本詩集 一九二六版」
1926(大正15)年5月
入力:川山隆
校正:noriko saito
2010年4月18日作成
青空文庫作成ファイル:
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