[#1字下げ]西瓜の番[#「西瓜の番」は中見出し]
西瓜畑さ
おら行《ゆ》かぬ
狐がゐるから
おら行かぬ
ホイホイちけ
西瓜の番
西瓜畑で
寝てたちけ
[#1字下げ]畑のとんぼ[#「畑のとんぼ」は中見出し]
とんぼ追つかけたら
畑さ逃げた
とんぼよウ
とんぼア畑で
スウイ スイ
[#1字下げ]お百姓生れ[#「お百姓生れ」は中見出し]
おらは田舎の
お百姓生れ
田螺《たにし》ながめて
暮してた
お前や東京の
お嬢《ぢよ》さま育ち
おらと生れが
ちがひやさ
[#1字下げ]麦の芽[#「麦の芽」は中見出し]
麦が芽を吹きや
雁《がん》 雁 帰る
一羽《いつぱ》帰れば
また一羽帰る
帰る雁でも
別れは惜む
畑見ながら
啼いて立つ
[#1字下げ]わしが鳥なら[#「わしが鳥なら」は中見出し]
わしが鳥なら(ヨー)
烏の鳥に(ヤンレサホイ)
啼いて夜明けを(ヨー)
知らせたい(ヤンレサホイ)
啼いて夜明けを(ヨー)
烏の鳥は(ヤンレサホイ)
騒ぎまはして(ヨー)
ふれあるく(ヤンレサホー)
[#改段]
茶ツ葉[#「茶ツ葉」は大見出し]
[#1字下げ]茶ツ葉[#「茶ツ葉」は中見出し]
[#2字下げ]一[#「一」は小見出し]
雀ア帰るに
かはたれ頃に
小雪ヤちらりと
来て降つた
茶の樹畑の
茶の茶ツ葉に
[#2字下げ]二[#「二」は小見出し]
雀ア来ちや啼き
来ちや見て啼いた
茶の樹畑の
茶ツ葉の上に
小雪ヤ降つちや解け
降つちや解けた
[#2字下げ]三[#「三」は小見出し]
茶の樹畑にや
茶の樹の茶ツ葉
小雪ヤ降るのに
かはたれごろに
雀ア茶ツ葉に
とまつてた
[#1字下げ]秩父三峰[#「秩父三峰」は中見出し]
朝にや朝霧
夕《ゆふべ》にや
狭霧《さぎり》
秩父|三峰《みつみね》ア
霧の中
霧にまかれりや
三峰さまも
霧にまかれた
ままで
寝る
[#1字下げ]菜の花畑[#「菜の花畑」は中見出し]
畑に菜の花
咲いたとさ
菜の花咲いたら
見てよかな
菜の花畑は
夕明り
日暮れにやお星も
出るだとさ
お星も出たなら
見てよかな
お星もちらちら
夕明り
[#1字下げ]鐘になりたや[#「鐘になりたや」は中見出し]
鐘になりたや
チヤン チヤカ チヤンの鐘に
叩きやチヤン チヤカ チヤンと
鳴る鐘に
チヤン チヤカ チヤンとナ
鐘は気楽ぢや
チヤン チヤカ チヤンのチヤンと
叩きや チヤン チヤカ チヤンの
チヤンと鳴る
チヤン チヤカ チヤンとナ
どうせなるなら
チヤン チヤカ チヤンの鐘に
叩きや チヤン チヤカ チヤンと
鳴る鐘に
チヤン チヤカ チヤンとナ
鐘になりたや
チヤン チヤカ チヤンのチヤンと
丸く角《かど》なく
暮したや
チヤン チヤカ チヤンとナ
[#1字下げ]秋風[#「秋風」は中見出し]
夕となれば
風は秋かや
そよそよと
野末の草に
そよそよと
風は吹く
野末の風も
今は秋なれや
野に鳴く虫は
秋の虫かや
ほそぼそと
草端の蔭に
ほそぼそと
虫は鳴く
草端の虫も
今は秋なれや
[#1字下げ]津島小唄[#「津島小唄」は中見出し]
津島 津島と
日の暮れ
頃はよ
風も津島へ
吹きたがる
風に吹かれりや
草木でも
靡くに
袖に吹く風
吹いて来る
[#ここから4字下げ]
(註。愛知県津島町は昔より美女多しと伝へらる)
[#ここで字下げ終わり]
[#1字下げ]はぐれ烏[#「はぐれ烏」は中見出し]
烏ア啼くから
出て見りやゐない
お母《つか》さんよ
わたしや烏に
だまされた
オヤお母さんよ
はぐれ烏だ
だました烏
お母さんよ
烏ア啼いても
もう出ない
オヤお母さんよ
[#1字下げ]御山小唄[#「御山小唄」は中見出し]
[#2字下げ]一[#「一」は小見出し]
霧にまかれりや
御山《おやま》が曇る
シヤンシヤンシヤン
御山曇れば
馬よ
雨となる
[#2字下げ]二[#「二」は小見出し]
御山雨降りや
つまさき辷《すべ》る
シヤンシヤンシヤン
辷りやころげる
馬よ
谷底へ
[#2字下げ]三[#「三」は小見出し]
谷は深谷
底なし地獄
シヤンシヤンシヤン
落ちりや地獄だ
馬よ
気をつけな
[#2字下げ]四[#「四」は小見出し]
せくな 急ぐな
頂上にや遠い
シヤンシヤンシヤン
せかず急がず
馬よ
早よ歩け
[#2字下げ]五[#「五」は小見出し]
風が強うなりや
御山は晴れる
シヤンシヤンシ
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