いつも啼く
[#1字下げ]岩手小唄[#「岩手小唄」は中見出し]
○
岩手片富士
あの山蔭で
なじよな心で あねこよ
暮すやら
○
あねこ思へば
あの山蔭の
雪もおぼろに あねこよ
解けぬかや
[#1字下げ]笠松機場唄[#「笠松機場唄」は中見出し]
[#2字下げ]一[#「一」は小見出し]
言ふた 言ふた 言ふた
お母《つか》さんが言ふた
美濃の笠松ア
住みよて居よい
同じゆくなら
美濃縞織りに
娘ゆけよと
よいこと言ふた
[#2字下げ]二[#「二」は小見出し]
トンカ トンカ トンカ
機場《はたば》で暮らしや
いつも心が
トンカ トンカ若い
昨夜《ゆふべ》夢みた
機場の夢を
ゆこかお母《つか》さん
美濃縞織りに
[#1字下げ]さむらひ[#「さむらひ」は中見出し]
空の雲さへ
日の暮れにや
風に吹かれて
はぐれがち
風はなさけに
吹くぢやなし
雨もなさけに
降るぢやなし
どうせなさけの
風ぢやとて
涙まさせる
ことばかり
[#1字下げ]小松の蔭[#「小松の蔭」は中見出し]
雉子《きぎす》ア啼くから
出て山見たりや
雉子ア小松の
雉子ア小松の
蔭で啼く
山は焼け山
焼け山蔭ぢや
雉子ア棲もとて
棲まりやせぬ
棲むにや棲まれず
小松の蔭へ
姿隠して
姿隠して
雉子ア啼く
雉子ア鳥でも
姿を隠す
人目しのんで
いぢらしや
[#1字下げ]籔鶯[#「籔鶯」は中見出し]
どこで生れた
籔鶯よ
わたしや谷間の
籔育ち
谷間出るときや
氷の筏
山にや斑《まだら》に
雪も降る
長い旅ゆゑ
窶《やつ》れたわたし
姿見せるも
恥かしや
[#1字下げ]雉子の雌鳥[#「雉子の雌鳥」は中見出し]
雉子《きじ》の雌鳥《めんどり》や
茅野の中で
子供たづねて
ほろたたく
わが子可愛や
茅野は深や
ほろろ ほろちけ
ほろたたく
西でほろほろ
東でほろろ
藤の焼け蔓
見ちやほろろ
わが子可愛や
地べたは広や
どこが地べたの
果てだやら
一の山越え
二山《ふたやま》蔭にや
同じ野もありや
原もある
雉子の雌鳥や
地べたの上を
踏んで啼き啼き
ほろたたく
前へ
次へ
全13ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング