#1字下げ]鐘になりたや[#「鐘になりたや」は中見出し]

鐘になりたや
チヤン チヤカ チヤンの鐘に
叩きやチヤン チヤカ チヤンと
鳴る鐘に
  チヤン チヤカ チヤンとナ

鐘は気楽ぢや
チヤン チヤカ チヤンのチヤンと
叩きや チヤン チヤカ チヤンの
チヤンと鳴る
  チヤン チヤカ チヤンとナ

どうせなるなら
チヤン チヤカ チヤンの鐘に
叩きや チヤン チヤカ チヤンと
鳴る鐘に
  チヤン チヤカ チヤンとナ

鐘になりたや
チヤン チヤカ チヤンのチヤンと
丸く角《かど》なく
暮したや
  チヤン チヤカ チヤンとナ


[#1字下げ]秋風[#「秋風」は中見出し]

夕となれば
風は秋かや
 そよそよと

野末の草に
そよそよと
 風は吹く

野末の風も
 今は秋なれや

野に鳴く虫は
秋の虫かや
 ほそぼそと

草端の蔭に
ほそぼそと
 虫は鳴く

草端の虫も
 今は秋なれや


[#1字下げ]津島小唄[#「津島小唄」は中見出し]

津島 津島と
日の暮れ
頃はよ
風も津島へ
吹きたがる
風に吹かれりや
草木でも
靡くに
袖に吹く風
吹いて来る
[#ここから4字下げ]
(註。愛知県津島町は昔より美女多しと伝へらる)
[#ここで字下げ終わり]


[#1字下げ]はぐれ烏[#「はぐれ烏」は中見出し]

烏ア啼くから
出て見りやゐない
  お母《つか》さんよ

わたしや烏に
だまされた
  オヤお母さんよ

はぐれ烏だ
だました烏
  お母さんよ

烏ア啼いても
もう出ない
  オヤお母さんよ


[#1字下げ]御山小唄[#「御山小唄」は中見出し]

[#2字下げ]一[#「一」は小見出し]

霧にまかれりや
御山《おやま》が曇る
  シヤンシヤンシヤン
御山曇れば
馬よ
雨となる

[#2字下げ]二[#「二」は小見出し]

御山雨降りや
つまさき辷《すべ》る
  シヤンシヤンシヤン
辷りやころげる
馬よ
谷底へ

[#2字下げ]三[#「三」は小見出し]

谷は深谷
底なし地獄
  シヤンシヤンシヤン
落ちりや地獄だ
馬よ
気をつけな

[#2字下げ]四[#「四」は小見出し]

せくな 急ぐな
頂上にや遠い
  シヤンシヤンシヤン
せかず急がず
馬よ
早よ歩け

[#2字下げ]五[#「五」は小見出し]

風が強うなりや
御山は晴れる
  シヤンシヤンシ
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