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 一種と二種とは辯證を要せず。三種四種をかく解析せる標準は、一には三種に屬する記事が多くは倭より郡に至る方面より着眼し、四種に屬する記事が多くは郡より倭に至る方面より着眼せるの別あるに由る。二には次有某國云々といへる國名の排列が大和の王畿附近、特に伊勢を起點として、次を逐て最後に及べるに、從郡至倭云々といへる國名の排列は、之と全く反對の排列を爲せるに由る。三には記事に重複ありて、屬辭に脈絡なく即ち三種の(い)節、風俗不淫の句が四種の(ニ)節、婦人不淫不妬等の句と重複し、三種の同節、禾稻紵麻以下、箭鏃に至る物産が四種の(ハ)節に記せる物産と脈絡相屬せず、四種の(ハ)節、父母兄弟云々の句、三種の(は)節會同坐起云々の句と脈絡相屬せざるが若きに由る。又
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夏后少康之子。封[#二]於會稽[#一]。斷[#レ]髮文[#レ]身。避[#二]蛟龍之害[#一]。(三種い節)
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とあるは、漢書地理志に粤地の事を記せる文を襲用し、
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作[#レ]衣如[#二]單被[#一]。穿[#二]其中央[#一]。貫[#レ]頭衣[#レ]之。種[#二]禾稻紵麻[#一]。蠶桑緝績。――其地無[#二]牛馬虎豹羊鵲[#一]。兵用[#二]矛楯木弓[#一]。――竹箭――或骨鏃。(同節)
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とあるは、大要漢書地理志の※[#「にんべん+瞻−目」、第3水準1−14−44]耳朱崖の記事を襲用せり。此等は魏人の想像を雜へて古書の記せる所に附會せるより推すに、親見聞より出でしにあらざること明らかなり。最後の參問云々も亦然りとす。
 次に零碎なる字句の異同を校訂して以て、此章を終ふべし。
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注に魏略を引きて正歳四時[#「時」に白丸傍点]とある時[#「時」に白丸傍点]を宋本には序[#「序」に白丸傍点]に作り。記[#「記」に白丸傍点][#二]春耕秋收[#一]とある記[#「記」に白丸傍点]を宋本には計[#「計」に白丸傍点]に作れり、從ふべし。重者滅[#「滅」に白丸傍点][#二]其門戸及親[#「親」に白丸傍点]族[#一]の滅[#「滅」に白丸傍点]を宋本は沒[#「沒」に白丸傍点]に親[#「親」に白丸傍点]を宗[#「宗」に白丸傍点]に作れり亦從ふべし。
其國本亦以[#二]男子[#一]爲[#レ]王。住七八十
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