想の上から考へて行つたので、思想の上から歴史の前後を發見する方法を立てた。歴史の記録のない時代のことを歴史的に考へるには、これより確かな方法がない。どうせ理窟のつんだ完全なものは段々後から出て來るに違ひない。一番最初は一番簡單のものであつて、それから段々いろ/\に理窟を變へて、引つくり返し/\上の方に行くに違ひないから、佛教の如き時間空間を構はない記録に對しては、斯ういふ方法で考へる外に仕方がないのであります。併しさういふ富永の考へ方も、今日から顧れば何でもないことでありますが、さういふことを發見する人といふものは中々あるものでない。それを富永が發見したのであります。これは非常に偉いことゝ思ひます。
 これは今日いろ/\な國の古代のことを研究するに非常な役に立つ原則だと思ひます。富永は支那のことも斯ういふ原則で研究しております。又日本のこともそれでやらうとしました。何も思想ばかりでない、事實に關する傳説でも、さういふ方法で研究が出來るのであります。但し此の加上の原則のえらいことは多くの人が皆氣が付きます。

          二「異部名字難必和會」の原則

 その外に多くの人が、富永
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