七略と漢書藝文志との異同

 漢書藝文志を讀むのに、細かい點で注意すべきことは、七略との關係である。班固はこれについて、出・入・省・加・續といふことを考へた。入とは二劉の時に無かつたものを班固の時に加へたものである。又時には分類法の意見の相違によつて直した例があり、これには一方には出、一方には入として編入替へをするのである。これらによつて七略と藝文志との相違の點がよく分る。又省は七略にあつたものを省いたものであるが、省いても、もとあつた本の名前を殘したので、全然抹殺したのではない。加は或る一書が前に出來上つてゐたのに後人が附加したもの、續は二劉から班固までの間に後人が書きついだものである。かかることについては、孫徳謙などの特殊な研究家が出來て、七略と藝文志との異同を明かにするに至つた。もつとも、これらの研究により、藝文志・七略・別録に關するあらゆる疑問が解けた譯ではない。孫徳謙が漢書藝文志擧例を書いたとき、王國維がその跋文を書き、まだ解決の出來ない問題を數條擧げてゐる。その中には、今日解決の出來るものもあるが、この研究は將來も行ふ必要あるもので、支那古代の學問の總括さ
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