でも甚だしいのは戰國策で、向の序録によれば、この書はもと或は國策といひ、或は國事といひ、短長といひ、事語といひ、長書といひ、修書といつたが、向は、これは戰國の時、游説者が自己の用ひられる國の爲めに策謀を立てたのであるから、戰國策とするがよいとして、ともかく名前を一定した。しかしその爲めに、本の名前の意味が變ることがある。戰國策の如きはそれで、これは前から國策といつたが、それは戰國の策謀の意味ではない。策は簡策の意で、國々のことを木簡か竹簡に書いたものといふ意味である。大體、國語があり、之に對して國策ができたと思はれる。國語は國々の物語で、我が語部式に、口傳で傳へられたのであらう。之に對して、國策は初めから文字に書かれて傳へられたので、かく名づけられたのであらう。それを劉向は策謀の意味に變へたのである。國策の策を簡策と解する説は、劉知幾の史通に見えるが、孫徳謙などは史通の説を誤りとしてゐるけれども、恐らくは誤りではあるまい。戰國策の名の中、長書・修書・短長とあるのは、書かれた物語が長いのを長書・修書といひ、又短いのもあるので短長といつたので、やはり本の體裁から云つたのであらうと思はれるか
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