ことは難しいのでありますが、唯さういふ問題を一つ提供して見たいと思ひます。
日本で一番崇高の神樣と申しますと天照大神であります。是は延喜式には單に伊勢國度會郡の處に大神宮としてあつて天照とも何とも書いてありませぬ。ところで「天照」といふ二字を冠つた神社が割合に近畿地方に多數ある。それが大神宮と果して關係のあるものか無いものかといふことを、人が是まで考へたことがあるかどうかといふことが第一疑問であります。山城の國から申しますと、つい近い處に木島坐天照御魂神社即ち木島明神といふのがある。此の神樣はなか/\粹な神樣でありまして、日本に遊仙窟と稱する、今日出版したら風俗壞亂で禁止されるやうな支那から早く渡りました有名な本がありますが、嵯峨天皇の時かに其の本が來たが、どう訓點を付けて宜いか讀めなかつた時に、此の木島明神が老人になつて顯はれて其の讀方を伊時といふ學士に教へた。それで遊仙窟の訓點が出來たのだといふ傳説がある位でありまして、なか/\隅に置けない神樣であります。それから大和國には類似の神が二つもあります。城上郡に他田坐天照御魂神社といふのがあります。それから城下郡に鏡作坐天照御魂神社と
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