あり。進化論は一方に於て、人類中心の舊信仰を根柢より破壞し盡し、餘勢の及ぶ所、往古の一致思想を破壞せしこと勝げて數ふべからず、實に一面に於ては、分裂時代思想の後勁たるの觀あれども、他の一面に於ては、反てかの分裂時代の氣運に薫熟せられし個々單立の各科學をして、一致時代に入るの準備を爲さしめし者たり。種類起原の説は、個々の模型より鑄出されしと信ぜられたる動植の各種族を一鏈繋せるのみならずして、更に動と植とを一鏈繋し、動植と鑛とを一鏈繋し、之を應用擴充する者は、此の一鏈繋法を以て、盡く宇宙の萬象を説明せんと試みたり。是れ進化論は實に學術に於て、分裂、一致兩時代の過渡を形成する效ある者と謂ふべし。其れ此の如く今後の氣運は、盡く思想一致の傾向あるものとすれば、その復た人心をして社會統合經緯の想念を發せしむべきや疑を容れず、三權鼎立、個人自由等の説は、既に故紙堆中に葬られ去らんとす、政教分離の妄見、亦尋で逝かん。天體の説明は星霧説ありて、個々中心の分立を統一し、進化説の發達は、漸やく各科學の統一を催し、統一の極、眞を求め、善を求め、美を求むるの念にして、皆歸一する所あり、東西境遇の阻絶より、殊別に
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