趨る、現に坤輿の精液を吸涸せんとするの概あるにあらずや。加ふるに交通の便益々開けて、大勢は遂に東西の隔離を繋紐して、大塊の面を擧て一團と爲さんとするを見る、天運それ果して循環するなり。是に於てか知る、その爭奪の勝敗に決すると、推攘の並存に歸するとを論ぜず、宗教の統一も、亦竟に今後の必至ならざるを得ず、その教義の各殊なる者は、長短相融合して竟に一味に落ちざるを得ざるを、啻に基督教の各派に於て然るのみならず、東西の一致は、實に佛教其他の諸宗教に於ける關係も亦復同一ならざるを得ざらしむ。
東洋古學の研究は、既に諸種の宗教が、其の初め亞細亞中央の高原に於ける拜天教の分派せる者たることを發見せしめて、探蹟の一路より統一の緒を發し、教理の研精、人類理想の歸趨は、探理一路より同一の傾嚮を取ること、既に徴あるの形勢たり。商工の分業が單獨孤立に止まらずして、經濟界一脈の經路は、相繋聯し、相資助せざるを得ざらしむること、今日既に朕兆の認むべきあり、而して諸科の學術が個々に分離せずして、系統的に相係屬せしむべきこと、獨逸哲學者が巧妙の論法に組織せられ、進化論の世に行はれし以來、益々その根基を鞏固にするの傾嚮
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