あらん、その共に同一氣運に薫熟されたる同根の枝葉とし、而して宗教を以てその大幹に近き者とせんは、蓋し至當なるを知る。既にして希臘古文學の復活、東洋サラセン智識の輸入あり、氣運漸く斡旋して、自由思想の發達を致すや、宗教革命は先づ人心に大變動を與へて、教權統一の形勢此に破れ、信仰自由の説は、啻に政教の關係より定められたるにあらずして、實は信念分裂の一現象として出でたるのみ。神なるものあり、實に宗教が由て建つ所なり、然るに彼の認むる所は必ずしも此の認むる所ならず、我の神は我の神のみ、汝の神は汝の神のみ、經典が僧侶傳授の解釋に局促せずして、人々自由の理會に放任せられしより、この勢遏むべからざるを致せり。教法の統一、既に得べからず、而して列國割據の勢は、是より先に現はれて今に至りて全く止まず。此に於て諸科の學術も亦派生岐分して、益々以て瑣に渉り微に入る、地球中心の説より、以て諸恆星各中心たるの説に變じ、人類中心の説は廢して、吾人は下りて哺乳動物の一列に就かざるを得ず、君主中心の説は廢して、民權自由の論盛に行はるゝに至る、亦た盡く是れ同一氣運の薫熟する所たり。分業の氣風、日月に發達して、唯一經緯の
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