居るが、この詔勅が確定するまでには門下省の同意を必要とする。門下省は封駁の權を有して、若し中書省の案文が不當と認むるときには、これを駁撃し、これを封還することも出來る。そこで中書と門下とが政事堂で協議して決定する事となる。尚書省はこの決定を受取つて執行する職務である。中書省は天子を代表し、門下省は官吏の輿論、即ち貴族の輿論を代表する形式になつて居るのではあるが、勿論、中書・門下・尚書三省ともに大官は皆貴族の出身であるので、貴族は天子の命令に絶對に服從したのではない。夫故に天子が臣下の上奏に對する批答なども、極めて友誼的で、決して命令的でない。然るに明清時代になりては、批答は全く從僕などに對すると同樣、ぞんざいな言葉遣ひで命令的となり、封駁の權は宋以後益々衰へ、明清に在りては殆んどなくなつた。
かくの如き變化の結果、宰相の位置は天子を輔佐するものでなくして、殆ど祕書官同樣となりたるが、尚宋代にては唐代の遺風も存在して、宰相は相當の權力を有したるも、明以後には全く宰相の官を置かぬ事になり、事實宰相の仕事をとれるものは殿閣大學士であつて、これは官職の性質としては天子の祕書役、代筆の役で、天
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