諸君も僕等もさうでありますが、智識階級はいつでも板挾みになります。がそれを如何にして維持するかといふことに就て少しもいゝ智慧を出した奴がない。然るに足利時代のものは之を考へて傳授といふことをやつたのです。詰り傳授に依らなければ凡ての智識が不正確といふことになつて、陰陽道は土御門家がやり、歌を詠むことは二條家、冷泉家がやるといふことになつて、何をするにも傳授に依らなければならないといふことになつて來ました。尤も是は日本ばかりではなく西洋でも中世の加特力教の坊さんなんどがやつぱりさういふ智慧を出して、人間を天國にやる鍵は坊さんが握つてゐる、坊さんに頼まなければ天國に行けないといふやうなことにしてしまつたのです。是は智識階級を維持しようとする時に出て來る智慧でありまして、大學の學問なども是は祕密にして傳授すべきものかも知れぬと思ひます(笑聲起る)。さうすれば斯ういふ處で講演などするのは間違です(笑聲起る)。大學の學問を祕密にして傳授でやり、故なく他人には教へないといふ事にすると智識階級の維持が出來ます(笑聲起る)、で足利時代の傳授はよく其邊の祕訣を心得たもので、凡ての學問が傳授でやつてゐまし
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