といふものは變らない、一定不變のものがあるといふことを主張する代りに、日本紀の神代の卷といふものが立派な一つの經典となつたのであります。是等は當時の信仰状態の變化といはれないが、從來不確實だつた信仰状態が、此時代に於て確定することになつて來たと言つていゝのであります。此應仁時代は亂世でありますけれども、さういふ國民の思想統一の上には非常に效果があつたと言へるのであります。
それから一つは其當時の公卿などの生活状態から來たのでありますが、公卿の生活状態が困難な處からして、神社とか寺院とかゞ一般の信仰に依つて維持される事を考へたと同じやうに、公卿も何か自分の家業に依て生活する道を考へるやうになつて、そこにいろ/\な傳授をするといふことが起りました。例へば古今集などの傳授をする事によつて生活するやうになつたのでありまして、是はよほど面白い考であります。それは今日やつてもきつと面白いと思ひます、詰り智識階級の自衞法であります(笑聲起る)。いつでも騷動があると――近頃も少し世の中がをかしくなると一方に資本家一方に勞働者があつて騷ぎ出し、其間でいつも困つてゐるのは智識階級である、こゝに集つてゐる
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