・壯于前趾・壯于※[#「九+頁」、よみは「きゅう」、第4水準2−92−18、44−6]の三種が大壯と夬との兩卦に跨つてゐるやうなこともある。これらは恐らく本來は相類似した語から成立つてゐる爻が一に集められてゐたのであつたものを、後になつて六十四卦に整へられるに際し、斯くは錯亂を來したのではないかと思ふ、それで若し以上考ふる如くなれば、元來易の各卦は必ずしも六爻から成立つてゐないことになり、自然又六爻即ち三畫の爻を二つ重ねた現在の卦の基礎を失ふことになるから、易の全體が六十四卦から成立つことも必ずしも必要でなくなるのである。故に易の本來の形式は各卦五種づゝの爻をもつたもので、前に擧ぐるが如き四種或は三種のものは其の殘缺したものと見るか、或は又必ずしも各卦同一の爻數を含むとは定まつてゐなかつたと見るか、その何れかに考へられよう。以上予が現存の易の經文を讀んで起し得た所の疑問であるが、更に別な方面から易の成立ちに就いて考へてみよう。
 先づ洪範に載つてゐる筮法によつて考へる。即ち洪範には筮法として貞悔の二法丈けを擧げてゐるが、現在の易では吉、凶、悔、吝、無咎、※[#「厂+萬」、よみは「れい」
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