の不合格品でさえ一頭数十円で希望者に応じきれない、普通この辺の農家でたちのいいのでも豚コロは五円内外に過ぎないが、岩崎のは不合格品で、四十円もすることになっている。
豚という奴は食う為に生きていて、食われる為に死んで行くように出来ている。廃物でも腐敗物でもこれでイヤと云うことを云わない、フーフー吹いて貪《むさぼ》り食う有様は寧ろ痛快と云いたい位である、この豚でさえ、仕つけると相当の礼儀作法は覚える。
子馬も一頭奥州から買入れて飼養したけれど、手数が煩わしいので売り払ってしまった。
犬は一頭いる、凡犬だけれども、よく吠えるので用心にはなる。
なお、この辺では狐を飼っている処も、狸を飼っている処もある、養魚池もある、養蚕は全国的にも歴史を持つ地方である。いずれ、それ等の副業、自分がやらないまでも調査研究はして見たいつもりでいる。
鶏は白色レグホン種を十羽飼養している、三カ月ものを一羽一円ずつで仕入れて五カ月目から産卵をはじめた、良卵を相当に産む、多い時は一日七箇、少ない時は三箇位の産卵、産まない日は無論一つも産まないのである。すべて市場へ出す卵は幼鶏をブローカーから買求めて飼養す
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