らは、苅《か》っても苅ってもあとからあとから成長する、併し、良畑をつぶしてこれを多量に植えることは考えものである、不用の空地や、地境等に植えて置くと宜しい。
 コロと称する二貫目位の子豚を買い入れて来て、これを半年以上飼養して二三十貫にして売り出すのであるが、昨今のつぶしは一貫目一円五六十銭から九十銭程度である。飼料や手当等を数えたら、そう大して利益とてはあるまいけれど、肥料の収穫が大きいし、また専門的に百頭千頭と飼養すれば相当な事業になる。つぶしに売ることをしないで別に種とりをやり、子を産ませると、その方が利益になる、ここの本村では全国的には豚の飼養が優秀なものだそうであって他府県へも輸出されるとの事だ。
 ここから三里離れた飛行場で有名な立川には岩崎家の子安養豚所がある、これは飛行場よりは寧《むし》ろ草分《くさわけ》なのであるが、さすがに岩崎家のものだけに全国一とか東洋一とかいうもので、ここには西洋から、一頭何千円もする種類の種豚が沢山に集められてある、弥之助も一度これを参観したことがある、所では快《こころよ》く場内を見せて呉れたが、ここの種豚の合格品は非常に高価で売買されるが、そ
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