の歌が暗示すると認めたものですから、ほっと安心しました。

         二十二

 上陸して島内の最寄りを一応視察した駒井甚三郎は、同行の田山白雲に向ってこう言いました、
「水も掘れば出て来る見込みは充分だし、土地も開けば耕作の可能性がたしかです。ただ川がないから、水田は覚束《おぼつか》ないと思うが、陸稲及び麦、しからずば蕎麦《そば》などは出来ましょう。そのほかに、この地特有の食糧を供する植物があると思います。ともかくもここへ我々の根を卸してみましょう、相当生活してみて見込みがなければないで、また手段方法を講ずる余地が有りそうなものです。それにこの島は、周囲せいぜい二三里のものでしょうが、必ずや遠からぬ附近に、これに類似した大小幾つかの島が存在すべき見込みがあります。ひとまずここを足がかりとして、近き海洋を視察している間には、我々に与えられた最も適当な楽土を発見するかも知れない、約束せられたる土地というようなものがないとは限らない――左様、東経は百七十度、北緯は三十何度の間、ハワイ群島はミッドウェイ諸島に近いところ、或いはその中の一部に属しているかも知れません。これらの島々は、ま
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