『其方《そのほう》は一種の眼光を具《そな》えた人物であるから、さだめて異国へ渡ってから、何か眼をつけたことがあるだろう、それを詳《つまび》らかに申し述べよ』とのことであったから、おれは、『人間のすることは、ドコへ行ったって、そう変るものじゃありません、アメリカだって御同様ですよ』と言ったが、再三再四、問われるから、『左様、アメリカでは、政府でも、民間でも、すべて人の上に立つ者は、みんな相当りこう[#「りこう」に傍点]でございます、この点ばっかりが、日本と反対のように心得ます』と言ったら御老中が眼を円くして、『この無礼者め、控えおろう』と叱ったっけ、ハハハハハハ……」
「支那人は、いったい気分が大きい、支那人は、天子が代ろうが、戦争に負けようが、ほとんど馬耳東風で、はあ、天子が代ったのか、はあ、ドコが勝ったのか、など言って平気である。ソレもそのはずさ、一つ帝室が亡んで、他の皇帝が代ろうが、国が亡んで他の領分になろうが、全体の社会は依然として旧態を存しているのだからノー」

         七十五

 かように天下有事、幕政維持か、王政復古かの瀬戸際――それに外国の難題が、攘夷《じょうい
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