ことだよ。誰も食いたくて食うわけではないが、そこだ、日頃の心がけというやつがそこにあるのだ。丹精して人間らしい作をつくり、それを丹念して囲穀《かこいこく》にして置くことだ。それが最上唯一の饑饉救済策というものだ。よくよく与八大明神の御託宣を聞いて置くがいいぞ。
 それから、若い者は天保の饑饉は知っているが、天明の饑饉時代を知る者は少なかろう、おれはそれを実地に見せられてよく知っているぞ。この村で食えなくなったものが、隊を成して次の村へと流れ込んだ、流れ込んでみたところで、次の村にだって、他村に食わす貯穀があるはずはない。そこで、流れ流れて毎日毎日、千人、二千人というものが、かたまって、飢死している、そうすると、先に飢えて死んだものの肉を、あとのが切り取って食ったものもあったぞ。食うや食わぬの境になると、人間が鬼になる浅ましさ、おれはこの眼でよく見て来たぞ。そのくらいだから、盗賊が横行する、いや、人間という人間がみんな盗賊になってしまう、浅ましいものじゃ。大名の米でさえも、警護が薄いと途中で飢えたる民が襲いかかって奪ってしまう、それだから、一台か二台の車に積んで運ぶ扶持米《ふちまい》でさ
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