りは程遠からぬところ、ここは大日本の魚山として聞えたる大原の来迎院こそは声明の根本道場と聞くからに、ここで修行をさせていただきたい、奥義《おうぎ》というもおこがましいが、見えぬ世界を見んとする不具者の欣求心《ごんぐしん》に御憐憫《ごれんびん》を下されたい、入門の儀、ひたすらに御紹介を頼み入ると、これは例のほしいままなる広長舌を弄《ろう》することなく、極めて簡単明瞭に来意の要領を、まず声明《しょうみょう》の博士に向って披瀝《ひれき》しますと、博士はその志を諒なりとして、院主上人に向ってその希望を通じましたところ、院主上人は、また弁信の志を憐んで、これに対面して次のように申しました。
「金剛語菩薩《こんごうごぼさつ》即ち無言語菩薩《むごんごぼさつ》、声明の奥義を極めんとならば、まず声なきの声を聞くべし、幸いにこの律呂《りつりょ》の川の上に音なしの滝がある、音なしの滝に籠《こも》って、無音底の音を聞く気はないか」
かように申されました時、弁信は、一議に及ばず、これこそ望むところとあって、直ちに翌日の明星をいただいて坊を出で、音なしの滝に詣《まい》りました。
その日より、滝のほとりに、ささ
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