人間の声にも、有位有声と、有位無声とがありますが、前者を十一位に分つと後者が四位、これを宮商角徴羽《きゅうしょうかくちう》に分けてすべての音声を十五位に分類する、これを律呂《りつりょ》という、十五位は十五声にして一声、一声にして全声なるものです。御承知でしょう、この外を流れる川に、呂の川と、律の川とがあります、この律と呂の川を溯《さかのぼ》って行きますと、そこに音なしの滝というのがあるのです、百声万音は律呂に帰し、律呂は即ち音なしに帰するというのが声明の極意なのです、そうして日本に於ける声明の総本山は即ちこの寺なのです、大日本の魚山《ぎょさん》はこの大原のほかにありません」
「ギョサンですか、ギョサンとは、どういう字を書きますか」
「魚という字です、サカナという字です、魚の山と書きまして、天竺《てんじく》、即ち印度《インド》では霊鷲山《りょうじゅせん》の乾《いぬい》の方《かた》にあり、支那では天台山の乾の方、日本ではこの比叡山の乾、即ち当山、大原来迎院を即ち魚山というのです、慈覚大師|直伝《じきでん》、智証大師|相承《そうじょう》の日本の声明の総本山なのです」
 声明の博士が、季麿青年
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