ら私が語り出でようとする長物語を、君たちが空《くう》に聞き流さないことを望みます」
と言いますと、季麿秀才は、それに敬意ある諒解を以てつけ加えました、
「左様でございます、哲学者が訴え得られる範囲は、少数の特志家の頭脳だけにしか過ぎませんが、詩人というものは、大多数の人にも、後代の人にも、了解される特権がございます、それをことさらに縄張りをして、大衆の文学だの、少数の芸術だのと、差別なきところに差別を設ける彼等の術策を憫《あわれ》まなければなりません、また、左様な術策にひっかかるおめでたき民衆を憫まなければなりません。世に優れたる詩人の空想ほど確実性を持つものはございません、科学などはそれに比べると全くお伽噺《とぎばなし》のようなものです。アミエルは、ミゼラブルの雄大なる構想を支配する中心思想を知ろうと思って、三千五百頁のあの大冊を幾度も繰返して読んだ後に、こういうことを言いました、ヴィクトル・ユーゴーは、効果を以てその美学論の中心としているから、作がこれによって煩わされている、然《しか》しヴィクトル・ユーゴーは何という驚くべき言語学的・文学的能力の所有者か――地上及び地下に於ける驚異
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