をして見せたには、一時《いっとき》うんざりしましたが、こうして、苦労人の昔の美しい人と一緒に歩いてみると、悪い心持は致しません」
と言ったのは、とうの立った雄蝶でありまして、昨夜以来、無条件の逗留を許された盲目のさすらい人の声であります。
見れば、今までのように、コケ嚇《おど》しの覆面や、白衣《びゃくえ》はかなぐり捨てて、さっぱりした竪縞《たてじま》の袷《あわせ》の筋目も正しいのを一着に及んで、帯も博多の角なのをキュッと締め込み、刀もなく、脇差もない代りに、手には時ならぬ団扇《うちわ》を携えて、はたはたと路傍の草花を薙伏《なぎふ》せながら先に立って、そぞろ歩きをしています。
若々しい老尼もまた、いい気なもので、すらりとした尼さんの姿ではあるが、この尼さんは、袈裟《けさ》もなく、法衣《ころも》もなく、数珠《ずず》さえも手にしていない代り、前の人と対《つい》な団扇を持って、はたはたと路傍の花を撫でながら、
「花尻の森へ行きましょうよ、忍踊《しのびおど》りを見に行きましょうよ」
「何ですか、そこは……花尻の森というのは」
「源太夫の屋敷あとなのです」
「その源太夫と申しますのは?」
「松
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